ERP
コンポーザブルERPとは:機能ごとに替えていくERPの戦略
シリーズERP 入門全11回
- 第1回ERPとは:意味と仕組み、基幹システムとの違いをわかりやすく
- 第2回販売管理とは:受注から入金までの業務フローと伝票の仕組み
- 第3回購買管理とは:発注・検収・請求書の照合・支払の流れと要点
- 第4回仕訳とは:借方・貸方のルールと勘定科目をわかりやすく
- 第5回MRPとは:資材所要量計画の仕組みと部品表、計算の手順
- 第6回マスタデータとは:品目・取引先などの例と、取引データとの違い
- 第7回管理会計とは:財務会計との違いを部門と子会社の例でわかりやすく
- 第8回職務の分離とは:ERPで一人に支払まで通させない権限の分け方
- 第9回ERP連携とは:CRM・MES・WMSとの役割分担と、データ連携の注意点
- 第10回Fit to Standardとは:ERPの標準に業務を合わせ、作り込みを絞る
- 第11回コンポーザブルERPとは:機能ごとに替えていくERPの戦略
- コンポーザブル ERP
- ポストモダン ERP
- スイート
- ベスト・オブ・ブリード
- 連携
- 正本
- 移行
- 機能
- クラウド
- AI
- Gartner
- ERP
- Oracle
- Microsoft
- AWS
目次
ERP(Enterprise Resource Planning の略)は、会社の販売・購買・在庫・会計などの取引を、部門をまたぐ共通の型で記録する業務ソフトである。ERP の製品は、こうした業務を一つの製品の一式(スイート)にまとめて届けてきた。
一式だと、変えたい業務が一つでも、入れ替えの話は全体に及びやすい。そこで、ERP が持ってきた業務そのものを、機能ごとに替えていく考え方が出てきた。
コンポーザブル ERP とは何で、ERP を一度に入れ替える形と比べて、何がうれしいのか。
コンポーザブル ERP とは、Gartner が名付けた ERP の戦略で、一つの塊の ERP を、事業の変化に合わせて替えられる機能の組み合わせへ、少しずつ置き換えていく。どの機能から替えるかは会社が選ぶ。
利点は三つある。変える範囲を絞れること、使い続けたい部分を残せること、新しい技術を取り込みやすいことである。
代わりに、システムをつなぐ費用と人が増えることがあり、ほかの業務とデータを分け合う機能は切り離しにくい。
調味料の卸が、注文の受け付けだけを替える
※ この節の例は、説明のために作った架空のものです。
ERP の全部を替えなくても、変えたい機能だけを別の製品に替えられる。ほかの業務はそのまま動き、替えた機能と ERP の間ではデータを受け渡す。
業務用の調味料を飲食店に卸す会社が、受注、在庫、会計を一つの ERP で動かしている。飲食店から、スマートフォンで注文したいと頼まれたが、ERP の受注の機能にはその画面がない。ERP を丸ごと替えれば、在庫と会計の担当まで新しい手順を覚え、記録も移すことになる。そこで会社は、注文の受け付けだけを別のクラウドのサービスに替えた。ERP の受注の画面は使わなくなる。
新しい手順を覚えるのは受注の担当だけで、切り替えで止まりうるのも注文の受け付けだけである。ただし、飲食店の名前と住所は、注文のサービスと ERP の両方に載るようになる。どちらを正式な記録にするかは、会社が決める必要がある。
コンポーザブル ERP とは:Gartner が名付けた戦略
コンポーザブル ERP は製品の名前ではなく、調査会社の Gartner が付けた戦略の名前である1。今の Gartner の定義では、事業の速い変化についていけるように、土台、管理、現場の業務の機能をそろえる、変化に合わせられる技術の戦略である2。同じページで Gartner は、塊の形の ERP を柔軟な機能に置き換えるよう勧め、これを少しずつ、しかし続けて価値を出すことを狙う進め方だと書いている2。名前の composable は「組み合わせられる」という意味である。
できあがる形は、多くの場合、自社の設備に置いたソフトとクラウドのサービスの組み合わせになる1。Gartner のアナリストは 2024 年に、コンポーザブル ERP は物というより戦略だと話した3。
言葉には前身がある。Gartner は 2014 年に、すべての必要を一つで満たすスイートという考え方は終わったと書き、スイートが分解されて変わっていく先をポストモダン ERP と呼んだ45。2020 年 10 月の Gartner の文書には、すでにコンポーザブル ERP という言葉がある6。
なぜ一度に入れ替えないのか:時間も範囲も大きい
Gartner は、ERP を、まとまった業務のアプリケーションの一式(スイート)を届ける力と定義している。一式であることには利点があり、業務をまたいで同じデータの持ち方を使える7。その分、入れ替えは大きな仕事になる。
Oracle は、自社の設備に置く ERP の導入は長くかかりやすく、二年に及ぶこともあり、関わる社員の教育にも多くの時間が要ると説明する8。Gartner は、2027 年までに、最近導入した ERP の取り組みの 70% 超が、当初の事業上の目標を十分には満たせないと予測している2。ただし、入れ替え方で分けた数字ではない。
変える範囲を機能ごとに絞れる
ERP の製品の会社も、順番を選べることを利点に挙げる。Oracle は、統合されていながら機能ごとの単位(モジュール)に分かれた今の ERP では、必要なものを必要なときに入れられ、どの業務から手を付けるかを会社が決められると書いている8。
ERP に限らない大きなシステムの置き換えでも、AWS(Amazon Web Services)は、一度に移す移行は危険が大きく、作業中は新しい機能を足すのも難しくなると説明する。そこで、特定の機能を一つずつ新しいものに替え、その間も元のシステムを動かし続ける9。Microsoft も、この進め方は、全体を一度に大きく変えるより、移行の危険を抑えられると説明する10。これらはコンポーザブル ERP についての説明ではなく、移行一般の話である。
作り込んだ部分を使い続けられる
TechTarget の 2022 年の記事では、Gartner の元アナリストで ERP の会社 Infor の幹部でもある人物が、20 年使って作り込んだ ERP を持つ大きな製造業の場面を挙げている。品質の管理や法令への対応を担う ERP を、取り替えたいというだけの理由で外す必要はない。一方で、財務と人事の機能は、やりたいことに合っていないことがある1。残す部分と替える部分を、機能ごとに分けて考えられる。
新しい技術を取り込みやすくなる
Gartner は、この形なら、AI や生成 AI、クラウドの ERP のような新しい技術も取り込みやすくなると書いている2。先の人物も、AI を使って現場の機械の故障を予測する製品のように、外から足したくなる機能が増えていると話している1。
ここまでの利点は、Gartner と、製品やクラウドの会社の説明である。Oracle、AWS、Microsoft の説明はコンポーザブル ERP に触れていない。一度に入れ替える形と比べてどれだけ早く、安く変えられるのかを示す数字は、これらの説明には載っていない。
連携の費用と人が増えることがあり、切り離しにくい業務もある
システムの間でデータを受け渡すこと(連携)には費用がかかる。Gartner は、ポストモダン ERP についての 2014 年の発表で、クラウドのサービスを一部に使っても全体の費用が下がるとは限らず、かえって増えることもあるとした。目先の安さで選ぶと、連携の費用で全体の費用が増え、データの管理、システムの連携、製品の会社との付き合いを担う人を、育てたり雇ったりする必要もあると注意している4。
切り離しにくい業務もある。先の人物は、Gartner の顧客が財務の機能だけを替えようとしたところ、購買や支払の機能とのつながりを切りにくかったと話す。取引先のデータがそこに載っていたことが一因である。そして、取引が多く、そろえておくべきデータも多い大きな業務を、製品の会社が一体で用意した機能から切り離すなら、本当に切り離すのかをよく考えるべきだという1。
移行の間は、新旧のシステムを同時に動かす費用もかかる。Microsoft は、この一時的な費用と、危険を抑える利点を比べるよう求める。小さなシステムで全体を替えるのが簡単な場合や、元のシステムをすぐに止める必要がある場合には、この進め方を勧めていない10。AWS と Microsoft は、元のシステムのコードや連携の口に手を入れられることを前提に置く910。製品の ERP でそれができるかは、別に確かめる必要がある。
分けたあとは、同じ記録が複数のシステムに載り、対象ごとに正式な記録を持つシステム(正本)を決める必要がある。
スイートのまま順番に入れる道もある
順番に入れることと、別々の会社の製品に分けることは、同じではない。先に挙げた Oracle の説明は、一つの会社のスイートの中で、どの業務から手を付けるかを選ぶ話である8。Oracle は、一緒に動くように作ったスイートなら、製品をつなぎ合わせる費用と手間が減り、大事なデータを一つで表せるとも書く11。スイートを売る会社自身の主張である。
Gartner は、スイートにそろえるときには妥協が要るかもしれず、どの会社もすべての領域で最良ではないと書く。そのうえで、スイートの製品の多くは成熟し、業務ごとの専門の製品(ベスト・オブ・ブリード)と肩を並べる水準に近づいているとも書く2。2014 年の「終わった」ほど強い言い方はしていない。
替える前に、その機能が何を分け合っているかを確かめる
製品を選ぶ前に、変えたい機能を一つ挙げ、その機能がほかの業務とどんなデータ(取引先、品目、支払先など)を分け合い、切り離すとどの連携が要るのかを確かめておきたい。AWS は、一般のソフトについて、依存の少ない部分が切り出しやすいとする9。取引が多く、そろえるデータも多い業務では、切り離す費用が利点を上回ることがある1。
替える価値があるかも確かめる。Gartner は 2014 年に、クラウドのサービスが他社と差をつける機能を持たなければ、費用対効果は改善しにくいと予測した4。これらの結果は、全部を替えるか、一部を替えるか、一つの会社の製品でそろえるかを決める材料の一つになる。
出典11件
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TechTarget「Evolution of postmodern ERP to composable ERP explained」2022年3月. https://www.techtarget.com/searcherp/podcast/Evolution-of-postmodern-ERP-to-composable-ERP-explained — Gartner の造語、残す部分と替える部分、切り離しにくい例。話し手は Infor の幹部。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6
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Gartner「Latest Enterprise Resource Planning (ERP) Insights」2026年10月の保存版. https://web.archive.org/web/20261009112234/https://www.gartner.com/en/information-technology/topics/enterprise-resource-planning — 定義、少しずつ価値を出す進め方、新技術の取り込み、スイートは専門の製品に近づく。2027年の予測は Gartner の予測。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
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Gartner「Gartner IT Symposium/Xpo 2024 APAC: Day 2 Highlights」2024年9月、保存版. https://web.archive.org/web/20240912231233/https://www.gartner.com/en/newsroom/press-releases/2024-09-10-gartner-it-symposium-2024-apac-day-2-highlights — コンポーザブル ERP は物というより戦略。 ↩
-
Gartner「Gartner Says By 2016, … Postmodern ERP Will Relegate Highly Customized ERP Systems to “Legacy” Status」2014年1月、保存版. https://web.archive.org/web/20230528065930/https://www.gartner.com/en/newsroom/press-releases/2014-01-29-gartner-says-by-2016-the-impact-of-cloud-and-emergence-of-postmodern-erp-will-relegate-highly-customized-erp-systems-to-legacy-status — 一つで満たすスイートは終わったとし、連携の費用と人が増えうるとも書く。 ↩ ↩2 ↩3
-
Gartner「Postmodern ERP」IT Glossary、2023年2月の保存版. https://web.archive.org/web/20230201061421/https://www.gartner.com/en/information-technology/glossary/postmodern-erp — 製品の会社が用意する連携の利点と業務の柔軟さの釣り合いを取る戦略。 ↩
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Gartner「The Future of ERP Is Composable」2020年10月、2025年7月の保存版. https://web.archive.org/web/20250724040902/https://www.gartner.com/en/documents/3991664 — コンポーザブル ERP の文書(要約のみ公開)。 ↩
-
Gartner「Enterprise Resource Planning (ERP)」IT Glossary、2022年12月の保存版. https://web.archive.org/web/20221209001933/https://www.gartner.com/en/information-technology/glossary/enterprise-resource-planning-erp — ERP はスイートを届ける力で、共通の業務の流れとデータの持ち方を共有する。 ↩
-
Oracle「What are the benefits of an ERP system?」2026年11月5日取得. https://www.oracle.com/erp/what-is-erp/erp-benefits/ — 必要なものを必要なときに入れられ、順番を選べる。自社設備の導入は二年かかることも(Oracle の主張)。 ↩ ↩2 ↩3
-
AWS「Strangler fig pattern」Prescriptive Guidance、2026年11月5日取得. https://docs.aws.amazon.com/prescriptive-guidance/latest/cloud-design-patterns/strangler-fig.html — 一度に移す移行は危険が大きく、一つずつ替える。ERP に限らない説明。 ↩ ↩2 ↩3
-
Microsoft「Strangler Fig pattern」Azure Architecture Center、2026年11月5日取得. https://learn.microsoft.com/en-us/azure/architecture/patterns/strangler-fig — 移行の危険を抑えるが、併存の費用がかかり、小さなシステムには向かない。ERP に限らない説明。 ↩ ↩2 ↩3
-
Oracle「Oracle Fusion Cloud Applications」2026年11月4日取得. https://www.oracle.com/applications/ — スイートはつなぎ合わせる費用を減らし、大事なデータを一つで表す(Oracle の主張)。 ↩
この記事はAIを使用して執筆されました。内容には誤りが含まれる可能性があります。事実や数字の出典は脚注から確かめられます。