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ERP連携とは:CRM・MES・WMSとの役割分担と、データ連携の注意点

2026/11/3 シリーズ「ERP 入門」 第9回 / 全9回

シリーズERP 入門全9回
  1. 第1回ERPとは:意味と仕組み、基幹システムとの違いをわかりやすく
  2. 第2回販売管理とは:受注から入金までの業務フローと伝票の仕組み
  3. 第3回購買管理とは:発注・検収・請求書の照合・支払の流れと要点
  4. 第4回仕訳とは:借方・貸方のルールと勘定科目をわかりやすく
  5. 第5回MRPとは:資材所要量計画の仕組みと部品表、計算の手順
  6. 第6回マスタデータとは:品目・取引先などの例と、取引データとの違い
  7. 第7回管理会計とは:財務会計との違いを部門と子会社の例でわかりやすく
  8. 第8回職務の分離とは:ERPで一人に支払まで通させない権限の分け方
  9. 第9回ERP連携とは:CRM・MES・WMSとの役割分担と、データ連携の注意点

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  • ERP 連携
  • CRM
  • MES
  • WMS
  • 連携
  • ISA-95
  • システム・オブ・レコード
  • 正本
  • EDI
  • 流通BMS
  • UN/EDIFACT
  • 重複
  • 冪等
  • データウェアハウス
  • ERP
  • SAP
目次
背景・問い・要点
背景

ERP(Enterprise Resource Planning の略)は、会社の販売・購買・在庫・生産・会計などの取引を、部門をまたぐ共通の型で記録する業務ソフトである。受注から出荷、請求、入金までの伝票と、それにつながる会計の記録を持つ。

だが、会社の仕事のすべてが ERP の中で動くわけではない。営業は、顧客との商談を顧客管理(CRM、Customer Relationship Management)の仕組みで追う。工場の現場は、製造実行システム(MES、Manufacturing Execution System)で作業を指示する。倉庫は、倉庫管理システム(WMS、Warehouse Management System)で棚ごとの在庫を扱う。取引先の会社も、自分のシステムを持っている。

問い

ERP はほかのシステムと、どこで仕事を分け、何を受け渡すのか。

要点

ERP 連携とは、会社の取引と計画の正式な記録を持つ ERP と、時間の刻みや仕事の細かさが違う CRM・MES・WMS とが、注文や指示の番号と状態を受け渡して仕事を分けることである。

受け渡しは途中で失敗しうるので、受け手は、送り直しても変わらない知らせの番号で重複を見つけて捨て、取り込めなかったものは直して送り直す。

ERP は、取引先の会社とは EDI(Electronic Data Interchange、電子データ交換)で受け渡す。分析は、ERP の記録を写した別の基盤で行う。

モデル・例示

家具の会社で、一つの注文が CRM から工場と倉庫を通って戻る

※ この節の例は、説明のために作った架空のものです。

一つの注文のデータは、番号を持ったまま CRM、ERP、工場の MES、倉庫の WMS の間で受け渡され、状態が戻ってくる。途中で同じ知らせが二度届いても、受け手が番号で見分けて一度だけ記録する。

オフィス用の家具を作る会社が、客から会議用のテーブル 10 台の注文を受けたとする。データは次の順に受け渡される。

  1. CRMERP1. 営業が入れた注文 C1(品目・数量・納期)を渡す。ERP が受注の伝票を作る
  2. ERPMES2. 注文 C1 から作った製造の指示 P7 を渡す
  3. MESERP3. P7 で 10 台できたという完成の報告を送る
  4. ERPMES4. 「届いた」という返事が、通信の切断で届かない
  5. MESERP5. 同じ完成の報告をもう一度送る
  6. ERP6. P7 と「完成の報告」の組を記録済みなので、二度目を捨てる
  7. ERPWMS7. 出荷の指示を渡す。WMS が棚から 10 台を出す
  8. ERPCRM8. 注文 C1 の状態「請求済み」を渡す

MES が、P7 の完成の報告を ERP へ送った直後に通信が切れ、ERP から「届いた」という返事が来なかったとする。MES は届かなかったと判断して、同じ報告をもう一度送る。ERP の受け付けの処理が二度目を捨てられるのは、指示の番号 P7 と知らせの種類「完成の報告」の組を、一度目ですでに記録しているからである。二度記録すれば、ERP の在庫は 20 台に増え、作っていない 10 台分まで帳簿に載ってしまう。

なぜ全部を ERP に入れないのか:求める速さと細かさが違う

製造の業界には、会社の業務と工場の現場の仕組みを階層に分けて、その間の受け渡しを決めた国際規格がある。米国の国際的な自動化の学会 ISA(International Society of Automation)が作った ISA-95 で、国際電気標準会議 IEC(International Electrotechnical Commission)の規格では IEC 62264 という1。この規格は、工場の機械の制御から会社の経営までを、仕事の種類ごとに段(層)に分ける。工場の作業の管理を第 3 層、事業の運営を第 4 層と呼び、MES のような作業の管理の仕組みが第 3 層を、ERP が第 4 層を受け持つ2。規格が扱うのは、第 3 層の作業と、第 3 層と第 4 層の間の受け渡しの中身である3。

二つの層は、求める速さが違う。第 3 層はふつう日、勤務の交代、時間、分、秒の刻みで動き、第 4 層は月、週、日の刻みで動く2。「リアルタイム」の意味も違い、第 3 層では現場で起きたことの数秒後に情報があることを、第 4 層では日ごと、または交代の後の数時間のうちに情報があることを指す2。数秒前の現場の記録が要る仕事と、日ごとに締めた記録で足りる仕事とでは、仕組みに求める速さが違うので、別の仕組みにする。

扱う細かさも違う。SAP(ドイツの SAP 社の ERP)の在庫の管理は、保管場所ごとに在庫の数量と金額を持つが、SAP の倉庫管理システムの EWM(Extended Warehouse Management)は、倉庫を棚の一つ一つまで細かく表せる4。倉庫の作業は、ERP の在庫の管理とは別の仕組みで扱う。それが別の会社の製品のことも、ERP の中の別の機能のこともある。ERP の製品を作る会社も、ほかの会社の MES とつなぐ方法を用意している。Microsoft は、Dynamics 365 の生産の機能の代わりに、ほかの会社の MES を使う会社もあるとして、その受け渡しを説明している5。

正式な記録は、対象ごとに一つのシステムが持つ

システムを分けると、同じ注文や同じ顧客が、複数のシステムに載る。そこで、対象ごとに正式な記録を持つシステムを一つ決める。これを、システム・オブ・レコード(system of record、正本)という。SAP の用語集では、ある対象について権威のある記録の出どころとなるシステムを指す6。SAP Business ByDesign では、マスタデータ(取引先や品目のような基準の情報)を別々のシステムで同時に変えると食い違うので、記録ごとに決めたシステムでだけ変え、それをほかのシステムへ自動で写す7。

請求書が、わかりやすい例である。Microsoft の Dynamics 365 では、営業の CRM(Sales)と ERP(Supply Chain Management)の間で見積と注文を行き来させるが、請求書は ERP で作って CRM へ写し、CRM の側では請求書を直せない8。写しが届くと、CRM の注文の状態が自動で「請求済み」に変わる8。お金の正式な記録は ERP が持ち、CRM はそれを見る側に回る。

何を受け渡すか:番号と状態

システムの間を渡るのは、主に番号と状態である。Microsoft の MES との受け渡しでは、何をいくつ作るかを書いた製造の指示を ERP が MES へ知らせ、MES は、作業で報告した良品と不良の数や、使った材料の量を ERP へ返し、製造の指示が終わったという状態も知らせる5。

番号は、二つのシステムで重ならないようにする。Dynamics 365 では、注文の番号が重ならないよう、ERP と CRM で別の番号の振り方を使う必要があり、例として、ERP では F1、F2、CRM では C1、C2 と振る形を挙げている8。在庫も、二つのシステムで合わせる。SAP では、実地の棚卸と在庫の差の記録で、在庫の管理の帳簿の在庫と、EWM の倉庫の在庫を、いつも一致させる4。

受け渡しの失敗:重複は受け手が捨て、取り込めないものは直して送り直す

受け渡しは、途中で失敗しうる。送り手が送った直後に落ちて、届かなかったと思い込んで送り直すと、同じ知らせがシステムに二度入る9。送った知らせは届いていても、「届いた」という返事だけが送り手に戻らないこともある9。

重複は、受け手の側で防ぐ。同じ知らせを二度処理しても、一度処理したのと同じ結果になるように作ることを、冪等(べきとう)という。そのためには、処理した知らせを記録し、送り直しても変わらない番号で、処理済みのものを飛ばす10。複数のシステムの間で、知らせをちょうど一度だけ届けることを保証するのは、現実には難しい10。だから受け手の側で重複を捨てる作りにする。

メッセージを届ける仕組みの側で重複を捨てる方法もある。Azure Service Bus は、注文の番号と知らせの件名を組にした番号を例に挙げ、決めた時間のうちに同じ番号で送られた知らせを捨てる9。

取り込めなかった知らせは、すぐには捨てずに残して直す。SAP がシステムの間でデータを受け渡すときの決まった形式(IDoc)では、受け取ったデータには、取り込めたか(状態 53)、取り込めなかったか(状態 51)の状態が付く11。状態 51 の IDoc は、誤りを直してから処理し直せる。直せないものには、削除の印を付けられる12。

欠落も起こりうる。Dynamics 365 では、CRM と ERP の同期を止めたあと、一日のうちに再開しないと、止めている間の変更が失われることがある13。

取引先との受け渡し:EDI

取引先の会社から注文が届く場合も、同じように受け渡す。取引先のシステムから、注文の番号、品目、数量が、人が打ち直さずに ERP へ入る。このように、会社や行政機関がコンピュータをネットワークでつなぎ、伝票や文書を電子のデータで自動に交換することを、EDI(Electronic Data Interchange、電子データ交換)という14。Web の画面に人が打ち込む方法は、厳密には EDI とは言えない14。EDI が広がる前は、発注した側のコンピュータが出した帳票を、受けた側が自分のコンピュータへ打ち直していた14。EDI は、その打ち直しを無くす。

会社ごとの独自の形式で交換するものも EDI と呼ぶことがあるが、なるべく広く合意された標準に従うのが望ましいとされる14。標準に従う場合、送る側は社内の形式を標準の形式に変え、受ける側は標準の形式を社内の形式に変えて取り込む14。国際的な標準には、国際連合の欧州経済委員会(UNECE)の UN/EDIFACT がある。UN/EDIFACT(United Nations rules for Electronic Data Interchange for Administration, Commerce and Transport)は、独立したコンピュータの仕組みの間で、構造を持つデータを電子で交換するための標準である15。日本の消費財の流通では、流通 BMS(Business Message Standards、流通ビジネスメッセージ標準)という標準がある16。

分析は、ERP の記録を写した別の基盤で

会社が、過去 5 年の売上を、品目別、月別に集計したいとする。この集計は、ERP の受注と請求の記録を、分析のための基盤(データウェアハウス)へ写して行う。何百万件もの取引を集計する分析を取引の仕組みで動かすと、ほかの取引を待たせて遅くすることがあり、いま入ってくる注文の記録まで遅れる。ただし、よく設計したスキーマのような例外もある17。データウェアハウスは、分析の処理を取引の処理から切り離し、取引の仕組みに影響を与えずに分析を速くする18。

出典18件
  1. International Society of Automation「ISA-95 Standard: Enterprise-Control System Integration」2026年11月1日取得. https://www.isa.org/standards-and-publications/isa-standards/isa-95-standard — 第 3 層に MES、第 4 層に ERP、主に第 3 層と第 4 層の間の受け渡しを扱う。 ↩

  2. OPC Foundation「OPC 10030 Common Object Model: ISA-95, 4.2 ISA-95 Summary」2013年. https://reference.opcfoundation.org/specs/OPC-10030/4.2 — 第 3 層は日から秒、第 4 層は月から日の刻み。リアルタイムの意味も違う。 ↩ ↩2 ↩3

  3. IEC「IEC 62264-1:2013 Enterprise-control system integration - Part 1」2026年11月1日取得. https://webstore.iec.ch/en/publication/6675 — 第 3 層の作業と、第 3 層と第 4 層の間の受け渡しの中身を扱う。 ↩

  4. SAP「SAP Extended Warehouse Management (SAP EWM)」SAP EWM 9.5 ドキュメント、2026年11月1日取得. https://help.sap.com/docs/SAP_EXTENDED_WAREHOUSE_MANAGEMENT/3d97bec9bf1649099384bb8167df3cf2/4ecb88b8b2422afee10000000a42189e.html — 在庫の管理は保管場所ごと、EWM は棚まで。帳簿の在庫と倉庫の在庫を一致させる。 ↩ ↩2

  5. Microsoft「Integrate with third-party manufacturing execution systems」Dynamics 365 ドキュメント、2026年11月1日取得. https://learn.microsoft.com/en-us/dynamics365/supply-chain/production-control/mes-integration — ほかの会社の MES を使う会社もあり、製造の指示と良品・不良の数などを受け渡す。 ↩ ↩2

  6. SAP「system of record (CA-EPC)」SAP Library - Glossary、2026年11月1日取得. https://help.sap.com/doc/saphelp_em700_ehp01/7.0.1/en-US/4d/20f9c9625063bde10000000a421944/content.htm?no_cache=true — ある対象について権威のある記録の出どころとなるシステム。 ↩

  7. SAP「System of Record」SAP Business ByDesign ドキュメント、2026年11月1日取得. https://help.sap.com/docs/SAP_BUSINESS_BYDESIGN/a4e601b400f2426387be0508ee5f5ab2/caf92ea3d4bb42298609876abc15e56f.html — 別々のシステムで同時に変えると食い違うので、決めたシステムでだけ変えて写す。 ↩

  8. Microsoft「Prospect-to-cash in dual-write」Dynamics 365 ドキュメント、2026年11月1日取得. https://learn.microsoft.com/en-us/dynamics365/fin-ops-core/fin-ops/data-entities/dual-write-prospect-to-cash — 請求書は ERP で作って CRM へ写し、番号は F1 と C1 のように分ける。 ↩ ↩2 ↩3

  9. Microsoft「Azure Service Bus duplicate message detection」Azure ドキュメント、2026年11月1日取得. https://learn.microsoft.com/en-us/azure/service-bus-messaging/duplicate-detection — 送り手が落ちて送り直すと、同じ知らせが二度入る。Service Bus は、決めた時間のうちに同じ番号で送られた知らせを捨てる。 ↩ ↩2 ↩3

  10. Microsoft「Idempotent Consumer pattern」Azure Architecture Center、2026年11月1日取得. https://learn.microsoft.com/en-us/azure/architecture/patterns/idempotent-consumer — 処理済みを記録して飛ばす。ちょうど一度の配送の保証は現実的でない。 ↩ ↩2

  11. SAP「Testing Inbound Processing」SAP NetWeaver 7.3 ドキュメント、2026年11月1日取得. https://help.sap.com/doc/saphelp_nw73ehp1/7.31.19/en-us/4b/4c3bba3b71265ce10000000a421937/content.htm?no_cache=true — 取り込めれば状態 53、取り込めなければ 51。 ↩

  12. SAP「Error Handling」SAP NetWeaver 7.3 ドキュメント、2026年11月1日取得. https://help.sap.com/doc/saphelp_nw73ehp1/7.31.19/en-US/4a/b0b2f4a19b6d83e10000000a42189c/content.htm?no_cache=true — 状態 51 の IDoc は、誤りを直してから処理し直せる。直せなければ削除の印を付けられる。 ↩

  13. Microsoft「Pause dual-write for maintenance」Dynamics 365 ドキュメント、2026年11月1日取得. https://learn.microsoft.com/en-us/dynamics365/fin-ops-core/dev-itpro/data-entities/dual-write/pause-for-maintenance — 同期を止めて一日のうちに再開しないと、変更が失われることがある。 ↩

  14. 日本情報経済社会推進協会「EDIとは」2026年11月1日取得. https://www.jipdec.or.jp/project/kcode/edi/about.html — 伝票や文書を電子のデータで自動に交換すること。Web の画面への手入力は厳密には EDI でない。独自の形式も EDI と呼ぶことがあるが、標準に従うのが望ましい。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5

  15. UNECE「Introducing UN/EDIFACT」2025年10月の保存版. https://web.archive.org/web/20251001215641/https://unece.org/trade/uncefact/introducing-unedifact — 構造を持つデータを電子で交換するための国際的な標準。 ↩

  16. 流通BMS協議会「流通BMS標準仕様」2026年11月1日取得. https://www.dsri.jp/ryutsu-bms/standard/standard01.html — 消費財の流通の EDI の標準。 ↩

  17. Microsoft「Online Transaction Processing (OLTP)」Azure Architecture Center、2026年11月1日取得. https://learn.microsoft.com/en-us/azure/architecture/data-guide/relational-data/online-transaction-processing — 大量の集計はほかの取引を待たせて遅くしうる。よく設計したスキーマのような例外もある。 ↩

  18. Oracle「Introduction to Data Warehousing Concepts」Oracle Database 19c ドキュメント、2026年11月1日取得. https://docs.oracle.com/en/database/oracle/oracle-database/19/dwhsg/introduction-data-warehouse-concepts.html — 分析の処理を取引の処理から切り離し、取引の仕組みへの影響を避ける。 ↩

この記事はAIを使用して執筆されました。内容には誤りが含まれる可能性があります。事実や数字の出典は脚注から確かめられます。