ものづくり・製造
公差とは?ばらつきとの違いとシックスシグマの意味
- 公差
- 製造業
- 品質工学
- シックスシグマ
- 工程能力指数
- Cpk
- 管理図
- 統計的工程管理
- パラメータ設計
- ばらつき
- 標準偏差
- 1.5σシフト
- 正規分布
- 公差限界
- 測定
- 代用特性
- 歩留まり
- 良品
- 不良
- 精度
- コスト
- 臨床検査
- シューハート
- Wheeler
目次
歩留まりは、作った製品のうち良品が占める割合で、製造業の中心となる指標だ。
工場は「全く同じ製品」を大量に作っているように見える。だが実際には、二つとして同じものはない。ネジ一本の長さも、配合した薬品の濃度も、必ずわずかずつ違う。材料の質、温度、機械の摩耗、湿度などの揺らぎが、製品の寸法や濃度を少しずつ変えるからだ。
この揺らぎは、どれだけ機械を磨いても消しきれない。消せない以上、ものづくりは「同じものを作る」ことではなく、「違いをどこまで許し、その範囲にどれだけ確実に収めるか」を決める仕事になる。許す範囲を広く取れば作るのは楽だが、製品の働きが揃わない。狭く取れば揃うが、作るのは難しく高くつく。
同じ工程で作った製品の寸法を測って横に並べると、平均のまわりで、真ん中が高く裾の低い山の形に散らばる。山の幅は、標準偏差(、シグマ。測った値が平均からどれだけ離れているかの、典型的な大きさ)を目盛りにして表す。良品として許す寸法の下限から上限までを、以下では「枠」と呼ぶ。
公差とばらつきは、何が違うのか。
公差は良品として許すと決めた寸法などの下限と上限の幅で、ばらつきは実際に作った製品の値が平均のまわりに散らばることだ。製品は寸法が公差の枠に入れば良品、外れれば不良で、ばらつきの山が枠からはみ出すと、はみ出した側の製品が不良になる。
工場は不良を減らすために、ばらつきを測り、原因を潰して山を細くする。山の細さを表すシックスシグマは、公差の枠の片側まで標準偏差6個ぶんの余裕がある状態を指す。よく言われる「百万個あたり3.4個」は長期の平均のずれ()を見込んだ値で、どの工程にも当てはまる定数ではない。
直径の公差が同じ軸を、散らばり方の違う二つの工程で削る
※ この節の例は、説明のために作った架空のものです。
平均が同じ二つの工程でも、同じ公差のもとで一方だけが不良を出すことがある。
ある軸の直径の公差を 10.00mm ± 0.05mm とする。9.95〜10.05mm なら良品、外れたら不良である。この軸は穴に差し込んで使い、太すぎると入らず、細すぎるとがたつくので、この幅に決めたとする。
一つ目の工程で削った軸は、直径が 9.92〜10.08mm に散らばる。二つ目の工程で削った軸は、9.98〜10.02mm に収まる。どちらも平均は 10.00mm で同じだ。
一つ目の工程では、9.95mm より細い軸と 10.05mm より太い軸が不良になる。二つ目の工程では、すべての軸が枠の内側に入る。
ここで公差を ±0.02mm に締めると、二つ目の工程でも散らばりの両端が枠の際に来て、少しの揺れで不良が出はじめる。
この例から言えることは三つある。
- 平均が同じでも、不良が出るかどうかは、散らばりの幅と枠の幅の関係で決まる(±0.08mm の散らばりは ±0.05mm の枠からはみ出し、±0.02mm の散らばりは収まる)。
- 散らばりを狭めると、同じ公差のままで不良が減る(一つ目の工程から二つ目の工程へ)。
- 公差を締めると、同じ散らばりでも不良が出はじめる(二つ目の工程に ±0.02mm の枠)。
不良は、山が枠からはみ出した分
製品は、測った値が公差の枠に入れば良品、外れれば不良とする。山の裾が枠からはみ出した分は、そのまま不良になる。直径が 9.92〜10.08mm に散らばる工程に ±0.05mm の枠をかければ、9.92〜9.95mm と 10.05〜10.08mm の軸が不良になる。
現場の課題の中心は、避けられないばらつきの山を、公差の枠の中にどれだけ確実に収め続けるかにある。山を狭くできれば裾が枠の内側に収まり、不良は減る。だから現場は、ばらつきを生む原因(温度の揺れ、機械の癖、材料の差)を一つずつ潰して、山を細くすることに力を注ぐ。
品質工学(タグチメソッド)は、枠の内側に入ることだけを品質とはみなさない。品質を「規格の内側にあること」と定義するだけでは、品質を得る方法も、コストとの結びつけ方も示せないとし、特性が狙いの値から外れること自体が損失を生むと考える1。狙いの値が 10.00mm なら、枠の内側にある 10.04mm の軸も、10.00mm の軸より損失が大きいと数える。
公差の決め方には、厳しさとコストのトレードオフがある。公差を厳しくする(枠を狭める)ほど、同じ工程でも散らばりの両端が枠の際に来て不良が出はじめるので、作るのは難しく高くなる。品質工学も、ばらつきへの影響が大きい要素ほど公差を狭める必要があり、それを満たすにはより高精度な部品・工程が要るため、生産・運用コストが上がると指摘している1。
品質工学は公差を決める前の段階に、パラメータ設計を置く。パラメータ設計は、設計そのものをばらつきに鈍感にする方法である。最適なパラメータを選べば公差はむしろ広げられ、安い部品と工程で足りる1。
だから優れた設計は、必要以上に厳しい公差をつけない。本当に必要な精度を見極めて枠を決めることも、ものづくりの技術である。必要のない精度を求めれば、その分の費用が無駄になるからだ。
「シックスシグマ」とは、山がどれだけ細いか
シックスシグマは、平均から公差の枠の片側の端まで、標準偏差6個ぶんの余裕がある状態を指す。山が枠に対して十分に細いので、長い間に平均が多少ずれても、不良は百万個あたり数個にとどまる2。逆に、山が枠ぎりぎりだと、小さな揺れでも不良が出る。
同じ余裕を表す数に、工程能力指数(Cpk)がある。Cpk は、平均から公差の近い側の端までの距離を で割った値である3。余裕が なら で、これが短期の Cpk にあたる。平均が ずれると見込むと余裕は になり、長期の Cpk は になる。
一般に語られる「百万個あたり3.4個」は、長期的には平均がずれることを見込んだ補正( シフト)を組み込んだ値である。ずれを見込まない なら、不良は百万個あたり0.002個で、3.4個とは約3桁違う2。どちらの数も、もとは製品の個数ではなく、欠陥が起きうる機会(opportunity)の百万回あたりで数えた値で、製品1個につき機会が1回なら百万個あたりと同じになる2。
1.5σ の補正は、どの工程にも当てはまる定数ではない
の補正が妥当かどうかは、工程の性質で変わる。臨床検査の論文は、補正の統計的な根拠を管理図の検出力に置く2。管理図は、工程の測定値を時間の順に打ち、平均や散らばりが変わったことを見つけるための図である。
管理図の検出力を根拠にしているので、同じ論文は、補正が妥当でありうるのは検査の分析工程だけだとし、分析の前後の工程へそのまま持ち込むことを批判する2。分析の前後の工程は、正規分布(平均を中心に左右対称の釣鐘形をした分布)に従うとは考えにくく、管理図でも監視されていないからだ。
製造工程については、同じ論文が、長期的なドリフトが通常起きる製造工程では のシフトが妥当だという観察を Harry と Lawson の 1992 年の報告として引く。そのうえで、シフトの実際の大きさは と違いうる(小さいこともある)とも書いている2。
補正そのものにも異論がある。Wheeler は、W. Edwards Deming の名を冠した会議に招かれた 2007 年の講演で、シックスシグマの多くの改善の手順が の緩衝帯を見込んで計算することを、工程がその内側に収まるという非現実的で根拠の無い仮定だとして退けている4。臨床検査の論文は、分野や工程の性質を問わず当てはめる普遍の定数とみなすべきではないと結論している2。
ばらつきを狭める前に、ばらつきを測る
ばらつきを抑えるには、まずばらつきを測れていなければならない。どれだけ散らばっているか、何が原因で散らばるか。測れないものは、狭められない。統計的工程管理の出発点は、工程のばらつきを管理図で継続的に測り、避けられない偶然の揺れと、突き止めて潰せる特定の異常とを区別することにある5。
シューハートは、品質を直接には測れない場合について、測定の精度が公差の幅を左右することも書いている。1931年の著書の第3章には「公差の縮小」という節があり、シューハートはそこで「与えられた確率のもとで、測定の誤差を小さくすれば公差限界を狭められるのは明らかである」と書いている5。この節が扱うのは、代用特性で測る場合だ(引張強さを硬さや密度から推す、といった状況)。
出典5件
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R. Unal & E. B. Dean「Taguchi Approach to Design Optimization for Quality and Cost」ISPA (NASA), 1991. https://ntrs.nasa.gov/citations/20040121019 — 影響の大きい要素ほど公差を狭め、高価な部品・工程でコストが増す(Phadke に帰す)。パラメータ設計は公差を広げうる。 ↩ ↩2 ↩3
-
A. Coskun & C. Ialongo「Six Sigma revisited」Biochemia Medica 30(1), 010901, 2020. https://doi.org/10.11613/BM.2020.010901 — 1.5σシフトの根拠を管理図の検出力に置き、検査の分析工程には妥当とする一方、正規分布に従いにくく管理図でも監視されない工程へ証拠なく持ち込むことを批判する。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7
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NIST/SEMATECH「e-Handbook of Statistical Methods」6.1.6 What is Process Capability?. https://www.itl.nist.gov/div898/handbook/pmc/section1/pmc16.htm — Cpk を、平均から規格の上限・下限までの距離をそれぞれ3σで割った値の小さいほう、と式で定義する。 ↩
-
D. J. Wheeler「Shewhart, Deming, and Six Sigma」SPC Press (Manuscript No. 187), 2007. https://www.spcpress.com/pdf/DJW187.pdf — 多くのシックスシグマの手順が1.5σの緩衝帯を置き、工程がその内側に収まるという非現実的で根拠の無い仮定で計算すると批判する。 ↩
-
W. A. Shewhart「Economic Control of Quality of Manufactured Product」D. Van Nostrand, 1931. https://archive.org/details/in.ernet.dli.2015.150272 — 管理図で偶然原因と異常原因を区別する。第3章§5は、代用特性で測る品質では測定誤差を減らせば公差限界を狭められるとする。 ↩ ↩2
この記事はAIを使用して執筆されました。内容には誤りが含まれる可能性があります。事実や数字の出典は脚注から確かめられます。