ものづくり・製造
あなたのiPhoneの「目」は、ソニー製——光を数える半導体の話
ものづくりの世界には、主役の陰で全体を支える「見えない名脇役」——たとえば電気をならす村田のMLCCのような部品——がいる。今回はもっと主役に近い、でもやはり目立たない部品。カメラの「目」そのものだ。
あなたのスマホで写真を撮るとき、レンズが集めた光を受け止めて電気信号に変えている小さな半導体がある。イメージセンサという。 そして世界のイメージセンサの約半分(売上ベース)、さらにスマホ向けに限れば5割超が、ソニー製だ1。 とりわけiPhoneのカメラセンサは、10年以上ほぼソニーが供給してきた——2022年にアップルのティム・クックCEO自身が認めている2。
イメージセンサは「光を数える」装置
中身は、ものすごく小さな光センサ(画素)を、数千万個ぎっしり並べたものだ。
ひとつの画素は「フォトダイオード」という素子で、やっていることは単純。 光(光子)が当たると電子がはじき出され、当たった光の量に比例して電気が溜まる。その電気を数値に変換すれば、「この点はどれくらい明るかったか」が分かる。 これを数千万点ぶん一斉にやれば、一枚の画像になる。つまりカメラのセンサとは、何千万個の“光の計量カップ”が並んだ盤なのだ。
問題は、画素を小さくするほど、そこに届く光が減って暗く・ノイジーになること。 この戦いの歴史が、そのままソニーの技術の歴史になっている。
ソニーの一手:「窓の前の配線」をどかす(裏面照射)
画素には、信号を運ぶ金属配線が必要だ。昔の作り方(表面照射)では、その配線が光の入り口の“前”に置かれていた。せっかくの光の一部が、配線にさえぎられて画素に届かない。
そこでソニーがやったのは、文字どおりチップを裏返すこと。 配線を画素の裏側に回し、光がフォトダイオードに直接当たるようにした。これが「裏面照射(BSI)」だ。同じ光でも、ずっと多くを拾えるようになった(低照度の感度がおよそ2倍に)。2009年に製品化された3。
その先も、ソニーは積み重ねた。
- 積層型(2012年):画素の層の“下”に、信号処理の回路チップを重ねて貼り合わせる。小さくしながら、賢くできる4。
- 2層トランジスタ画素(2021年発表):これまで画素の中で横並びだった部品を上下2階建てにして、一画素でより多くの光を扱えるようにした(飽和信号量がおよそ2倍)5。
「これ以上小さく」の壁——だから“賢さ”へ
画素はどんどん小さくなり、最先端では1辺が約0.56マイクロメートルまで来た6。 これは——緑色の光の波長とほぼ同じだ。光そのものより小さい入れ物に光を入れようとしている、と言ってもいい。つまり「ただ小さく」はもう物理の壁にぶつかりつつある。
だから競争の軸は、「小さく」から「賢く」へ移る。何枚も重ねて回路を載せ、画素同士を束ね(ビニング)、計算で暗所やダイナミックレンジを稼ぐ。半導体の微細加工とアナログ回路の設計と光学が、一体で要求される——ここがソニーの堀(モート)だ。
なぜ簡単に真似できないのか
ソニーは、設計から製造までを自社で抱える垂直統合(IDM)で、2021〜23年度だけで約9300億円をイメージセンサ増強に投じた7。長崎・熊本などに巨大な工場を構える7。 裏面照射・積層・サブ波長画素といった工程は、深い溝で画素を隔てるなどナノの作り込みの塊で、新型センサ一つの開発に数年と巨額の費用がかかる。化学(材料)×微細加工×アナログ設計×光学が不可分に絡む——MLCCと同じ構図だ。「ものづくりの強さ」とは、この絡まりを束ねて歩留まり良く量産できること、に尽きる。
正直な補足。イメージセンサ事業はスマホ市場への依存が大きく(需要の約6割がモバイル)、波がある。ソニーは一時掲げた「シェア6割」目標を下方修正した8。サムスンが高画素で激しく追い、2027年ごろにはアップルがサムスンも採用するとの観測もある2。中国勢も低価格帯で伸びている。世界一は、ここでも固定された地位ではない。
出典
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iPhoneセンサのソニー供給はティム・クックが2022年12月に「10年以上」と言及(DPReview)。アップルが2027年頃サムスンを second source にするとの報道(Financial Times発、2025)は計画段階。 https://www.dpreview.com/news/3849832154/apple-s-tim-cook-confirms-it-s-been-using-sony-sensors-in-its-iphones-for-over-a-decade ↩ ↩2
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裏面照射(Exmor R):2008年6月発表・2009年製品化、世界初の量産BSI。低照度感度およそ2倍(Wikipedia “Exmor”/phys.org)。 https://en.wikipedia.org/wiki/Exmor ↩
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積層型CMOS(Exmor RS):2012年8月、世界初の積層型として発表、同年10月出荷(Sony/phys.org)。 https://phys.org/news/2012-08-sony-exmor-rs-world-stacked.html ↩
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2層トランジスタ画素:2021年12月発表、IEEE IEDM 2021、飽和信号量およそ2倍(Sony Semiconductor Solutions ニュースリリース)。 https://www.sony-semicon.com/en/news/2021/2021121601.html ↩
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最小画素ピッチ約0.56µm(OmniVision, 2022年2月発表/200MPセンサで製品化)。緑色光の波長と同程度。 https://www.ovt.com/press-releases/omnivision-leads-pixel-shrink-race-with-the-development-of-worlds-smallest-0-56-micron-pixel/ ↩
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2021〜23年度(FY2021〜2023)に約9300億円をイメージセンサに投資、長崎(Fab5)・熊本に工場を新増設(Japan Times/Japan Today)。IDM=垂直統合。 https://japantoday.com/category/tech/sony-to-build-new-image-sensor-factory-in-kumamoto-in-chip-push ↩ ↩2
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スマホ依存(モバイルが需要の約6割)と、2025年度に掲げた「シェア6割」目標の先送り・下方修正(DigiTimes, 2025/PetaPixel, 2024)。 https://www.digitimes.com/news/a20250616PD225/sony-sensor-competition-2025.html ↩
この記事はAIが下書きし、人間が編集・公開しています。