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ものづくり・製造

試作と量産の違い:まれな不良、ばらつきの源、歩留まりの立ち上がり

2026/6/21 (更新: 2026/11/3)

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目次
背景・問い・要点
背景

製造業では、新しい製品を試作の段階で一度動かすことと、それを工場で大量に作り続けることの間に、大きな隔たりがある。試作は、腕のいい人が選んだ材料で少数をじっくり作る。量産は、多数の作業者・機械・供給業者にわたって同じ品質を保ちながら、桁違いの数を作る。多くのスタートアップや新製品が、「動くものは作れたのに、量産できない」という段階で止まる。

研究室で試作品が一度動いても、量産で求められることがそろったとは限らない。量産では、同じ作り方を長い期間にわたって繰り返しながら、出来上がる品の大半を良品にし続けなければならない。作った品のうち良品になる割合を歩留まりと呼ぶ。歩留まりが低いままだと、作った品の多くが捨てられ、売上が費用に追いつかない。製造を始めた直後の歩留まりは低く、工程を直すにつれて上がっていく。この上昇を歩留まりの立ち上がりと呼ぶ。

問い

作り手が試作で一度動かした製品を100万個作ろうとすると、何が新たに難しくなるのか。

要点

生産数が不良率の逆数の数倍に届くと、試作では出会わないまれな不良がほぼ確実に起きる。量産では作業者・機械・供給業者が増えるぶん、ばらつきの源も桁違いに増える。

たとえば「1万個に1個」の不良は、100個の試作なら期待値が約0.01個だが、100万個では約100個になる。採算の面では、半導体製造のモデル分析が、欠陥をどこまで落とし切るかよりも、歩留まりがどれだけ早く立ち上がるかが採算を最も左右すると見積もる。一方で、累積の生産量が積み上がると、習熟によって単位あたりの労務費が下がる効果もある。

モデル・例示

「1万個に1個」の不良は、つくる数で日常になる

※ この節の例は、説明のために作った架空のものです。

同じ不良率のまま生産数だけを増やすと、試作では一度も出会わない不具合が、ラインで繰り返し起きる不具合に変わる。

ある不具合が「1万個に1個」の割合で起きる工程を考える。試作で100個を作っても、不良の期待値は約0.01個である。試作の段階では、この不具合にまず出会わない。そのため、工程は「完璧だ」と見える。1万個を作れば不良は約1個で、たまに出る程度である。100万個を作れば、同じ不良率でも約100個が不良になり、ラインではこの不具合が繰り返し起きる。

⚠ 概念図:実データではない 「1万個に1個」不良が出る工程で、つくる数を増やすと—— 100個 不良 約0.01個(まず出会わない=“完璧”に見える) 1万個 不良 約1個(たまに出る) 100万個 不良 約100個(もはや例外ではなく、繰り返し出る) 同じ信頼性でも、数が変われば「まれ」は「日常」になる。 棒の長さは不良数に比例している。100個の行は細すぎて見えず、1万個の行もごく細い。
不良率が同じ「1万個に1個」でも、100個ならまず不良に出会わないが、100万個なら不良は約100個にのぼる。試作で見えなかった問題が、量産では繰り返し起きる。

まれな不良は、生産数とともにほぼ確実に起きる

量産で新たに難しくなることの一つは、試作の数では出会わないまれな不良が、生産数が増えるとほぼ必ず起きる不良に変わることだ。不良の個数の期待値は、不良率に生産数を掛けた数になる。試作の数では期待値が1を大きく下回る不具合も、生産数が不良率の逆数に届くと平均して約1個出るようになり、その数倍を作れば、ほぼ必ず現れる。不良率が1万個に1個なら逆数は1万個で、100万個はその100倍にあたる。試作では一度も見なかった問題も、量産ラインではほぼ確実に、繰り返し起きる。

量産では、ばらつきの源が桁違いに増える

試作と量産では、ばらつきの源の数が桁違いに違う。試作は、腕のいい人が、選りすぐりの材料で、じっくり1個作る。量産では、何百人もの作業者、何台もの機械、複数の供給業者、昼と夜、夏と冬のすべてにわたって、同じ品質を保ち続けなければならない。機械は摩耗し、材料のロットは変わり、人は替わる。放っておけば、品質は必ずずれていく。

だから一流の工場は、「小さなばらつきがあっても、結果が変わらない」頑丈な工程を設計する(ロバスト設計)。これを体系化した代表的な方法論が田口玄一のパラメータ設計で、性能を左右する制御可能なパラメータを選び、現場では制御できないノイズ(ばらつき要因)に対して鈍感になるよう工程そのものを設計する、という考え方だ1。「ばらつきに鈍感な工程を設計する」という発想は、1991年の概説によれば、田口の方法として日米の自動車や家電の設計ですでに成功裏に使われていた1。

ただし、田口が提案した、工程の結果のデータを一つの数に要約する評価指標(信号対雑音比)については、統計学者が疑問を呈している。目標値に合わせる場合の指標はばらつきが平均に比例するときにしか目的に合わず、値を大きくする場合と小さくする場合の指標は、データの要約として不十分になりえ、位置の尺度としては極めて非効率になりうるという2。発想は使われてきたが、そのための具体的な手法選びには今も論争の余地がある。

採算は歩留まりの立ち上がりの速さに左右される

半導体製造を対象にしたモデル分析は、量産の採算が歩留まりの立ち上がりの時期に大きく左右されると見積もっている。それによれば、歩留まりの立ち上がりが半年早まれば累積純利益は2倍以上になり、半年遅れれば3分の2が消える3。

工程が最後にどこまで欠陥を減らせたかも、採算を大きく動かす。工程が成熟したあとに落ち着く欠陥密度(電気的フォールトの密度)を、終端欠陥密度と呼ぶ。同じモデル分析では、この値が0.5から0.2個/cm²へ下がるかどうかで、事業の採算が変わる3。モデルの歩留まり式(ポアソン型)に、欠陥が落ちると不良になるチップ上の面積(臨界面積)として1.4cm²を入れれば、良品率は約50%と約76%で、1.5倍の開きになる。ただし原典はこの要因を、欠陥密度をさらに下げても採算の伸びが次第に小さくなる側に置き、採算を最も左右するのは欠陥密度の到達水準よりも、歩留まりがどれだけ早く立ち上がるかだとしている3。

量産で作り続けられる力は、量を積むこと自体ではない。同じモデル分析は、歩留まりが上がる前に生産量だけ引き上げても産出の大半が無駄になるだけで上乗せは無いとし、歩留まり学習を成功させるのは工程開発の初期に問題を速く解く能力だと示唆している3。このモデルは二つのことを前提に置く。工程開発の段階で技術者が系統的な問題を潰していくと欠陥密度は半年で一桁下がること、そして量産の立ち上げはその歩留まり上昇のあとに来ることである。この二つは分析から出た結果ではなく、業界の技術ロードマップ(ITRS 2001年版)に基づいてモデルに入れた前提である3。

累積の生産量が増えると、単位あたりの労務費は下がる

量産で費用が下がる側の要因もある。累積の生産量が積み上がるほど、作業者が作業に慣れ、数量に見合う治具や工具を入れられるようになり、単位あたりの労務費は系統的に下がっていく。この「学習曲線」は、ライト(T. P. Wright)が1936年に航空機の生産で報告した4。原典の曲線は、同じ機種を異なる数量で作った過去の2〜3点から経験的に起こし、その後データが増えるたびに補正したもので、製造中に大きな変更が入らないことを前提にしている4。大きな設計変更が入る場面では、この費用の下がり方を当てにできない。


不良率×生産数で不良“個数”が増えること(まれな事象が大数で顕在化する)は初等的な確率。量産におけるばらつき源の増大と、試作と量産の間で新製品の開発が止まりやすいことは、生産工学・製品開発の標準的な知見。

出典4件
  1. R. Unal & E. B. Dean「Taguchi Approach to Design Optimization for Quality and Cost: An Overview」ISPA Annual Conference (NASA), 1991. https://web.archive.org/web/20240227080511/https://ntrs.nasa.gov/api/citations/20040121019/downloads/20040121019.pdf — パラメータ設計をノイズに頑健な設定の選択と定義する概説。 ↩ ↩2

  2. G. E. P. Box「Signal-to-Noise Ratios, Performance Criteria, and Transformations」Technometrics 30(1), 1988. https://doi.org/10.1080/00401706.1988.10488313 — 目標値型の信号対雑音比の限界をLeónら(1987)から引き、大小を狙う型は自ら批判し、変換による代替を示した。 ↩

  3. C. Weber「Yield Learning and the Sources of Profitability in Semiconductor Manufacturing and Process Development」IEEE TSM 17(4), 2004. https://ieeexplore.ieee.org/document/1353315/ https://web.pdx.edu/~webercm/documents/2004%20Weber%20Yield%20Learning.pdf — 歩留まり学習の速度が採算を最も左右するとした。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5

  4. T. P. Wright「Factors Affecting the Cost of Airplanes」Journal of the Aeronautical Sciences 3(4), 1936. https://pdodds.w3.uvm.edu/research/papers/others/1936/wright1936a.pdf — 累積生産数が倍になるごとに平均労務費が一定割合で下がることを示した学習曲線の起源論文。 ↩ ↩2

この記事はAIを使用して執筆されました。内容には誤りが含まれる可能性があります。事実や数字の出典は脚注から確かめられます。