ものづくり・製造
MLCC——スマホに約千個入る部品で村田製作所が世界一
目次
最新のハイエンドのスマートフォンには、あなたが名前も知らない部品が、約1000個入っている1。 ひとつは砂粒より小さい。なのに、それが足りないとスマホもパソコンも車も動かない。
その部品の名前は MLCC(積層セラミックコンデンサ)。 そして、この地味な“名脇役”を作る世界一の会社は、京都の 村田製作所だ——同社は自社サイトで世界シェア40%(車載は50%)としている——同じ数値は2021年の同社記事にもあり、第三者集計では2024年で31.8%とする推計もある2。
なぜ、こんな小さな部品が「世界一」を競うほど難しいのか。それを覗くと、「ものづくり」という言葉の本当の意味が見えてくる。
まず、コンデンサって何をするもの?
コンデンサを乱暴にたとえると、電気をちょっとだけ貯められる、小さな水タンクだ。 電気の流れは、実際にはガタガタ波打っている。そのままでは繊細な電子回路が誤動作する。 そこでコンデンサが、多いときに少し吸い込み、足りないときに少し吐き出して、流れをなめらかにする。
スマホには電源や信号の経路が無数にあり、そのあちこちに“ならし役”が要る。だから1台に1000個も入る。レベル2+の自動運転機能を積んだ高級EVでは1万個以上1——調査会社は電気自動車(BEV)で1万〜1万8000個とする3——、自動運転機能を持たないエンジン車でも約3000個だ1。現代の電子機器は、この見えない名脇役の大群に支えられている。
なぜ「世界一」を競うほど難しいのか
MLCCの性能は、ざっくり言えば「薄いセラミック層を、いかに何枚も、欠陥なく積めるか」で決まる。重なりが多いほど、小さなまま容量を稼げるからだ。
ここに、気が遠くなるような難しさが詰まっている。
- 薄さ:村田は5G向け新製品について、セラミック1層が「髪の毛(約80µm)の100分の1」——換算しておよそ0.8マイクロメートルだと説明する。最先端はさらに薄く、eeNews Europe は主要メーカーが0.3マイクロメートル未満の層の生産を拡大していると報じる4。
- 枚数:それを数百層(村田が2025年7月に投入した0402インチサイズ=1.0mm×0.5mmの品は800層)、一枚もズレず・欠けず・短絡せずに積む5。
- 小ささ:いちばん小さい製品は 0.16mm × 0.08mm × 0.08mm(2024年に村田が発表した世界最小。それまでの最小品0.25mm×0.125mmに比べ、体積でおよそ75%減)6。文字どおり砂粒だ。
- 量:これを世界全体で年に4兆個規模で作る(調査会社 TrendForce は2023年の需要を約4.19兆個と推計する)7。しかも一個の不良が機器を壊しうるので、歩留まり(良品率)が命になる。
そして核心は材料にある。MLCCの心臓は、チタン酸バリウムという、粒径をナノメートル級まで微細化したセラミックの超微粒子だ。先端品では50ナノメートルを切る粒子が使われる(村田が2025年に投入した0201インチ=0.6mm×0.3mmの0.22µF品)3。 この粉をどれだけ細かく・均一に作れるかが、層の薄さと品質を決める。焼き固める(焼結)ときに割れず・縮みすぎず・電極がショートしないよう、粉のレシピと焼成の工程を“擦り合わせる”ノウハウが要る4。これこそが、簡単には真似できない強みだ——村田は1944年の創業以来、原料・製造プロセス・生産技術への理解を一体で積み上げてきたと自ら書いている6。
これが「ものづくり」の正体だ。 すごい設計図があれば作れる、のではない。ナノの粉を作る化学と、何百層を歪みなく焼き上げる工程が、不可分に絡み合っている。これは本稿の見立てではなく、村田自身がそう言っている——「材料と製造プロセスの両方を自社で開発できない企業は、MLCC の小型化・大容量化を先導できない」4。村田も自社サイトの「強み」欄に、「原料から完成品までの一貫生産体制にもとづく収益性」を挙げている2。チタン酸バリウムの調達にも、合弁を通じて足がかりを持っている8。「材料」と「工程」が一体になった摺り合わせの塊——それが世界一の堀(モート)になる。
どう役に立つ・なぜ面白いのか
MLCCは、現代エレクトロニクスの“隠れた急所”だ。スマホを薄く、EVを賢くするほど、より小さく・より多くのMLCCが要る。だから2021年のコロナ禍でも、いま進行中のAIサーバー需要でも、MLCC不足が世界のものづくりを揺らしてきた——サムスン電機によれば、AIサーバーは一般的なサーバーの10〜15倍のMLCCを使う9。
ただし、増え方が一本調子だと村田が見ているわけではない。車1台あたりの個数を示した同社の記事は、1台1万個という現在の想定を超えて部品数が増えるかは「慎重に見る必要がある」とし、部品数が増えれば故障率も上がるため、できるだけ少ない個数で高機能な回路を組む方向へ技術開発が向かうだろうと述べている。同社はすでに、使用個数を減らす提案を顧客へ始めている1。本稿が上で引いた調査会社の1万8000個という上限は、この1万個という水準をすでに超えている。数え方(対象車種・搭載範囲)が違う可能性があり、本稿はどちらかを採らない。
CPUやGPUといった大型チップを動かすにも、その足元では少数の部品メーカーに供給が強く偏っている(AIサーバーの電源網では、GPUや広帯域メモリのダイから2mm以内にコンデンサを置く必要があるとされる3)。これは、技術の世界の力学を考えるうえでとても示唆的だ。
正直な補足も置いておく。MLCC市場は好不況の波が大きい寡占市場で9、村田・サムスン電機・太陽誘電・TDK・京セラAVXの上位5社が売上の約3分の2を占める(2024年のメーカー別集計)10。中国メーカーのシェアも伸びており、2024年下期の売上シェアは1割程度と報じられている10。世界一は、固定された地位ではなく、薄さと歩留まりの絶え間ない競争の上にある。
出典10件
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スマホに約1000個、車に3000〜10000個:村田製作所「Automotive MLCC」記事(2021年6月23日付)。同記事は「最新のハイエンド機で1,000個」「レベル2+の自動運転機能を積んだ高級BEVで10,000個超」「自動運転機能を持たない典型的なエンジン車で約3,000個」と記し、車1台あたりでは「多いもので3,000〜5,000個」とする。同記事はまた、部品数がこれ以上増えるかは「慎重に見る必要がある」とし、村田自身が使用個数を減らす提案を顧客に始めているとも述べている。末尾には「掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合がある」との断りがある。 https://article.murata.com/en-global/article/automotive-mlcc-1 スマホの約1000個は、村田の2024年9月19日付プレスリリースでも「最新のスマートフォンで最大1000個」と再掲されている。 https://www.murata.com/news/capacitor/ceramiccapacitor/2024/0919 ↩ ↩2 ↩3 ↩4
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先端品のチタン酸バリウム粒径50nm未満:Mordor Intelligence(村田が2025年に投入した0201サイズ0.22µF/6.3V品として記載。粒径の一文には単位系が無いが、同レポートは別節(Case Size)で 0201 サイズを
0.6 × 0.3 mmと記しており、インチ呼称である。本文はこの寸法を併記した)。同レポートはまた、電気自動車(BEV)1台あたり10,000〜18,000個(従来車は3,000個)、AIサーバーの電源網ではGPUや広帯域メモリのダイから2mm以内へのコンデンサ配置が要る、とも記す。本稿がこのレポートから引く3つの数値(粒径・BEV1台あたりの個数・2mm以内)は、いずれも調査会社の記述で、メーカーの一次発表では確認していない。 https://www.mordorintelligence.com/industry-reports/multi-layer-ceramic-capacitor-mlcc-market ↩ ↩2 ↩3 -
「髪の毛(約80µm)の1/100」:村田製作所「MLCC for 5G smartphone」(自社が「髪の毛の約1/100の厚さ」と明記)。同ページは 2021年3月5日付で、記述はその時点の「新開発品」についてのものである。より薄い層への進行について、eeNews Europe(2026年5月19日)は大手が0.3µm未満の層の生産を拡大していると報じる。ただしこのくだりは、同記事が Mordor Intelligence の別レポート(Low Voltage MLCC market)を要約した段落に置かれたもので、メーカーの一次発表ではない——本稿が他の脚注で引く Mordor の MLCC 市場レポートのほうには、この数値は無い。同レポートが村田の強みとして挙げるのは「0.6µm 未満の誘電体層を製造できる能力」(
dielectric layers below 0.6 µm)で、0.3µm 未満は個社の到達厚としては確認していない。Wikipedia “Ceramic capacitor” は誘電体の最小厚を1995年4µm→2005年1µm→2010年約0.5µmと記す。焼結の難所は村田の同記事(5G smartphone)にある——the ceramic sheet shrinks significantly after sintering/the entire film may crack due to shrinkage during sintering/the electrodes that sandwich the dielectric sheet may touch and short circuit。本文が挙げる「割れず・縮みすぎず・ショートせず」の3つは、この記述に対応する。 https://article.murata.com/en-global/article/mlcc-for-5g-smartphone-2 ↩ ↩2 ↩3 -
数百層:村田製作所「MLCC for 5G smartphone」(「現代のMLCCでは層数は数百に達しうる」)。 https://article.murata.com/en-global/article/mlcc-for-5g-smartphone-2 800層は Mordor Intelligence(村田が2025年7月に投入した47µFの0402インチ品を「0.6µm厚の誘電体800層」と記載。定格は同レポートが4Vとするのに対し村田の一次発表は2.5Vdcなので、本稿は後者を採る)。調査会社の記述で村田の一次発表に無いのは、800層・0.6µm厚という内訳のほうである。 https://www.mordorintelligence.com/industry-reports/multi-layer-ceramic-capacitor-mlcc-market 村田自身は2025年7月10日、0402インチ(1.0×0.5mm)で47µFの世界初量産を発表した(世界初は2025年7月9日時点の自社調べ)。同社はこれをセラミック誘電体層と内部電極の微細化という自社技術によるものだとし、同容量の0603インチ品に比べ搭載面積が約60%減、同サイズの前世代22µF品に対し容量が約2.1倍だとしている。 https://www.murata.com/en-global/news/capacitor/ceramiccapacitor/2025/0710 ↩
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世界最小006003・体積比・創業年:村田製作所プレスリリース(2024年9月19日、自社News)。同リリースは寸法を
0.16mm x 0.08mm x 0.08mm (L/W/T)と記し、前世代の008004(0.25×0.125mm)に対しa volume ratio approximately 75% lowerとする。またSince its inception in 1944, Murata has been committed to the exploration and advancement of ceramic capacitors, nurturing its unparalleled understanding of raw materials, manufacturing processes, and production technologiesとも書く。0.25×0.125mm(008004)は2014年の節目で現在の最小ではない。 https://www.murata.com/news/capacitor/ceramiccapacitor/2024/0919 ↩ ↩2 -
年4兆個規模:TrendForce プレスリリース(2023年11月14日)は、2023年の世界 MLCC 需要を約4.193兆個、2024年を約4.331兆個(前年比3%増)と推計する(
the demand for MLCCs in 2023 is estimated to be around 4.193 trillion units)。需要の推計であって出荷実績の統計ではない。 https://www.trendforce.com/presscenter/news/20231114-11920.html Wikipedia “Ceramic capacitor” は「2012年時点で年10¹²個超」と記す。 https://en.wikipedia.org/wiki/Ceramic_capacitor ↩ -
チタン酸バリウム微粒子・焼結の難しさ・原料統合:村田は2023年3月、チタン酸バリウム生産の合弁(MF material)設立を決議したと発表した——ただし出資比率は村田35%・富士チタン工業55%・石原産業10%で、村田は少数株主である(passive-components.eu/村田コーポレートニュース)。なお合弁の持分構造から「原料を押さえている」と読むのは本稿の解釈であって、村田がそう述べているわけではない。ただし材料と工程の不可分性そのものは、村田自身が 4 で明言している(この JV 発表のページ自体には焼結・収縮・ショートの記述は無い。本脚注が支えるのは原料統合の事実までで、製造上の難所は 4 が支える)。 https://passive-components.eu/murata-establishes-joint-venture-company-to-produce-mlcc-raw-materials/ ↩
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MLCC不足:eeNews Europe(2026年5月19日)は、大手がAIサーバー向けに生産を振り向けた結果として高容量MLCCが逼迫していると報じ、「2021年のコロナ禍の供給危機を思わせる」としている(同記事に2018年への言及はない)。 https://www.eenewseurope.com/en/ai-drives-mlcc-shortage/ ↩ ↩2
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上位5社で「売上のほぼ3分の2」(2024年メーカー別集計):Mordor Intelligence。同社が挙げる5社は村田・サムスン電機・太陽誘電・TDK・京セラAVX。なお同レポートのヤゲオ25%は汎用品の生産能力であってシェアではない。 https://www.mordorintelligence.com/industry-reports/multi-layer-ceramic-capacitor-mlcc-market /中国勢が2024年下期に売上シェア10%(2019年比で4ポイント増):passive-components.eu。ただし同記事は自ら
as reported by Business Post and Futubullと断っており、一次の集計ではなく二次の紹介である。 https://passive-components.eu/chinas-mlcc-makers-reach-10-market-share/ ↩ ↩2
この記事はAIが執筆しています。内容には誤りが含まれる可能性があります。ご注意ください。