In Silico

ものづくり・製造

MLCC(積層セラミックコンデンサ)とは?作るのが難しい理由

2026/6/21 (更新: 2026/11/4)

  • MLCC
  • 電子部品
  • ものづくり
  • 材料
  • 積層セラミックコンデンサ
  • 村田製作所
  • チタン酸バリウム
  • サムスン電機
  • 京セラAVX
  • TDK
  • 太陽誘電
  • コンデンサ
  • 誘電体
  • セラミック層
  • 焼結
  • 歩留まり
  • 粒径
  • 世界シェア
  • 寡占市場
  • AIサーバー
  • スマートフォン
  • 電気自動車
  • 合弁
  • 富士チタン工業
  • Mordor Intelligence
  • TrendForce
目次
背景・問い・要点
背景

スマートフォンや自動車の電子回路には、少量の電気を一時的に貯めて流れをならす小さな電子部品(コンデンサ)が大量に載っている。一つのコンデンサが貯められる電気の量を、容量と呼ぶ。その代表が積層セラミックコンデンサ(MLCC、Multilayer Ceramic Capacitor)で、セラミックの薄い層と金属の電極を交互に何百枚も重ね、砂粒ほどの大きさに収める。機器が小さく高機能になるほど、この部品は一つあたりを小さくし、使う数を増やす方向へ進んできた。

ところが、作れる会社は限られ、上位の数社が市場の大半を占めている。設計の図面を手に入れても、同じ品質の部品を同じ量だけ作れるとは限らないからだ。セラミックの粉を細かく均一に作る工程と、薄い層を重ねて焼き固める工程の出来が、そのまま品質と良品の割合を左右する。

本稿は、MLCC の世界首位とされる京都の村田製作所を例に取る。

問い

MLCC を作るのは、なぜ難しいのか。

要点

MLCC を作るのが難しいのは、薄いセラミック層を何百枚も、一枚も欠陥なく積まなければならないからだ。それには、メーカーが細かい粉を均一に作る材料の技術と、何百層を歪みなく焼き上げる工程の技術を擦り合わせる必要がある。

完成品は、向かい合う電極のどれか一組でも短絡すれば使えないので、層の枚数が増えるほど、1枚あたりの不良率のわずかな差が良品の割合を大きく動かす。首位の村田製作所自身も、材料と製造プロセスの両方を自社で開発できない企業は小型化・大容量化を先導できないと述べている1。

モデル・例示

層を薄くして枚数を増やすと、1枚の不良が全体に響く

※ この節の例は、説明のために作った架空のものです。

MLCC は、同じ大きさのまま層を薄くして枚数を増やすほど多くの電気を貯められる。その一方で、全部の層が無事でなければ使えないので、枚数が増えるほど良品の割合が下がりやすい。

高さ 0.4 mm の部品の中に、セラミックの層を積むとする。外側を覆う部分の厚さは無視し、高さの全部を層に使えるとして数える。電極を含めた1層を 4 マイクロメートルにすれば 100 層、0.5 マイクロメートルにすれば 800 層が入る。向かい合う2枚の電極とその間のセラミックが、一組の小さなコンデンサになる。電極は左右の端子へ交互につながるので、どの組も同じ二つの端子につながり、各組が貯める電気が足し合わされる。そのため重なりが多いほど、同じ大きさのまま多くの電気を貯められる。つまり容量が大きくなる。

次に、1枚を積むたびに、割れ・ズレ・短絡(向かい合う電極どうしがつながってしまい、電気を貯められなくなること)が起きない確率を 99.9% とし、どの層の不良も互いに関係なく同じ確率で起きるとする。完成品は全部の層が無事でなければ使えず、各層の無事は互いに関係しないので、良品になる確率は 99.9% を層の数だけ掛けた値になる。100 層の部品が良品になる確率は 0.9991000.999^{100} でおよそ 90%、800 層では 0.9998000.999^{800} でおよそ 45% になる。1枚あたりの不良を 0.01% まで下げると、100 層で約 99%、800 層で約 92% に戻る。

層の厚さと不良率の組を見比べると、次の二点が読み取れる。

  1. 同じ外寸のまま層を薄くすれば、積める枚数が増え、容量を稼げる(誘電率の高い材料、つまり同じ厚さと面積でもより多くの電気を貯められる材料に替えるなど、別の道もある)。
  2. 枚数が増えるほど、1枚あたりの不良率のわずかな差が、完成品の良品率を大きく動かす。

MLCC は電気の流れをならす部品

コンデンサは、少量の電気を一時的に貯められる部品だ。 電気の流れは、実際には細かく変動している。そのままでは繊細な電子回路が誤動作する。 そこでコンデンサが、多いときに少し吸い込み、足りないときに少し吐き出して、流れをなめらかにする。

スマホには電源や信号の経路が無数にあり、そのあちこちに流れをならすコンデンサが要る。だから最新のハイエンド機では1台に約1000個入る2。一つは砂粒より小さいが、それが足りないとスマホもパソコンも車も動かない。レベル2+の自動運転機能を積んだ高級な電気自動車(BEV、Battery Electric Vehicle)では1万個以上2、自動運転機能を持たないエンジン車でも約3000個だ2。

※ 概念図(断面の模式) MLCCの中身(断面のイメージ) 青と橙の電極が交互に重なり、間はセラミック セラミック1層 ≈ 0.8マイクロメートル =髪の毛の約1/100 (村田の2021年の5G向け品) 最先端はさらに薄く、 0.3マイクロメートル 未満の層の生産を拡大 層は数百枚、 全体は砂粒サイズ
セラミック(誘電体)と金属電極を交互に何百層も積み、砂粒サイズに収める。重なりが多いほど、たくさん電気を貯められる。

村田製作所の世界シェアは、自社開示で40%

MLCC の世界首位は京都の村田製作所で、同社は自社サイトで世界シェアを40%としている3。2021年の同社記事は、全体の40%と車載の50%に加えてサイズ別の値も示し、二つのサイズ区分のうち大きいほうで50%、小さいほうで60%としている2。第三者の値では、passive-components.eu の記事が、韓国経済新聞の報道を引く段落で、村田が市場全体で40%超を占めると書く4。自社サイトの40%と、この40%超には集計基準が書かれておらず、自社サイトの値には時点も無い。

層を薄く、多く、欠陥なく積む難しさ

MLCCの性能は、主に、薄いセラミック層を何枚、欠陥なく積めるかで決まる。重なりが多いほど、小さなまま容量を稼げるからだ。

この積層には、次の難しさがある。

層の薄さと品質は、層の材料になる粉をどれだけ細かく・均一に作れるかで決まる。MLCC の層は、チタン酸バリウムというセラミックの粉から作る。村田は5G向けの新製品で、この粉の粒の大きさ(粒径)を細かくそろえ、均質で密なシートにしたと説明している1。 薄い膜の厚さがむらになると、向かい合う電極が触れて短絡し、その部品はコンデンサとして働かなくなる1。短絡に至らなくても、膜厚のばらつきが大きいと耐電圧と信頼性が下がる1。焼き固める(焼結)ときに割れず・縮みすぎず・電極がショートしないよう、粉の配合と焼成の工程を擦り合わせるノウハウが要る1。このノウハウは、簡単には真似できない強みである。村田は1944年の創業以来、原料・製造プロセス・生産技術への理解を培ってきたと自ら書いている6。

粉を作る化学と、何百層を歪みなく焼き上げる工程は、切り離せない。村田自身が「材料と製造プロセスの両方を自社で開発できない企業は、MLCC の小型化・大容量化を先導できない」と述べている1。

村田は、材料と工程の両方に自ら関わっている。自社サイトの「強み」欄には「原料から完成品までの一貫生産体制にもとづく収益性」を挙げ3、チタン酸バリウムを作る合弁会社にも出資している8。材料と工程の擦り合わせが、小型化・大容量化で先頭に立つための条件になる、というのが本稿の解釈である。ただし、その体制は村田だけのものではない。調査会社 Mordor の低電圧 MLCC のレポートは、独自のセラミック粉末や一貫した電極めっきの体制が新規参入を阻むと書き、その体制を村田・サムスン電機・TDK の3社がそれぞれ持つとしている1。

AIサーバーと車で増える需要と、寡占の中の競争

スマホを薄く、電気自動車を高機能にするほど、より小さく・より多くのMLCCが要る。2021年のコロナ禍でも、いま進行中のAIサーバー需要でも、MLCC 不足が世界の電子機器の生産に影響してきた。サムスン電機によれば、AIサーバーは一般的なサーバーの10〜15倍のMLCCを使う9。eeNews Europe は、日本と韓国の大手が生産能力を AI 向けへ移していると報じる。業界の分析は、不足の原因を原料の不足ではなく、利益の薄い品の設備を各社が増やさないことにあると見ている9。

村田自身は、車1台あたりの個数がこの先も増え続けるかを慎重に見ている。同社の記事は、1台1万個という現在の想定を超えて部品数が増えるかは「慎重に見る必要がある」とし、部品数が増えれば故障率も上がるため、できるだけ少ない個数で高機能な回路を組む方向へ技術開発が向かうだろうと述べている。同社はすでに、使用個数を減らす提案を顧客へ始めている2。

GPU(Graphics Processing Unit、画像処理装置)のような大型チップを動かすにも、そのすぐ近くにMLCCが要る。基板やチップが出す熱で周りが高温になるため、小さく容量が大きいうえに、高温でも信頼性を保つ品が求められている9。村田の0402インチ・47µFの品では、105℃まで動く型が GPU の近くに置くのに向くとされる9。

MLCC市場は好不況の波が大きい寡占市場で、生産は村田・TDK・京セラAVX・太陽誘電の日本勢と、韓国のサムスン電機、台湾のヤゲオが占める9。中国メーカーのシェアも伸びており、2024年下期の売上シェアは1割程度と報じられている4。伸びている AI サーバー向けでは首位との差が小さく、passive-components.eu は韓国経済新聞の報道として、村田 45%、サムスン電機 約40% と書く4。同じ寸法と容量の品を、首位の村田と競合が同じ年に出した例もある。村田が2025年7月に世界初量産を発表した0402インチ(1.0 mm×0.5 mm1.0\ \mathrm{mm} \times 0.5\ \mathrm{mm})・容量47µFの品は、京セラAVXも同年5月に開発を発表し、2025年末に生産を始めたと報じられている59。


出典9件
  1. 村田製作所「MLCC for 5G smartphone」2021年3月5日. https://article.murata.com/en-global/article/mlcc-for-5g-smartphone-2 — 新開発品の層を髪の毛(約80µm)の1/100とし、焼結の収縮・割れ・短絡を挙げ、材料と工程の両方を自社開発できない企業は小型化を先導できないと書く。0.3µm未満は eeNews が要約した Mordor のレポート。 https://www.mordorintelligence.com/industry-reports/global-low-voltage-mlcc-market ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8

  2. 村田製作所「Automotive MLCC」2021年6月23日. https://article.murata.com/en-global/article/automotive-mlcc-1 — スマホ最新機に1000個、エンジン車に約3000個、レベル2+の高級BEVに1万個超とし、シェア約40%・車載50%、サイズ別に0603M 50%・0403M 60%を記す。部品数がさらに増えるかは慎重に見るべきで、使用個数を減らす提案を始めたとも述べる。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5

  3. 村田製作所「Capacitors」同社サイト. https://corporate.murata.com/en-us/company/business/capacitor — 自社シェアを40%とし(時点の記載なし)、強みに原料から完成品までの一貫生産体制にもとづく収益性を挙げる。 ↩ ↩2

  4. passive-components.eu, 2025年6月16日. https://passive-components.eu/chinas-mlcc-makers-reach-10-market-share/ — 中国勢の2024年下期の売上シェア10%を他紙の報道として紹介し、韓国経済新聞を引く段落で村田の全体シェアを40%超、AIサーバー向けを村田45%・サムスン電機約40%と書く。 ↩ ↩2 ↩3

  5. 村田製作所 ニュースリリース, 2025年7月10日. https://www.murata.com/en-global/news/capacitor/ceramiccapacitor/2025/0710 — 0402インチ・47µFの世界初量産(自社調べ)。京セラAVXは同年5月に同品の開発を発表した。数百層は村田の5G向け記事。 https://global.kyocera.com/newsroom/social/2025/001045.html https://article.murata.com/en-global/article/mlcc-for-5g-smartphone-2 ↩ ↩2

  6. 村田製作所 プレスリリース, 2024年9月19日. https://www.murata.com/news/capacitor/ceramiccapacitor/2024/0919 — 006003インチ(0.16×0.08×0.08mm)を世界最小とし、従来最小の008004(0.25×0.125mm)比で体積約75%減。スマホ最大1000個も再掲し、1944年の創業以来、原料・製造プロセス・生産技術への理解を培ったと書く。 ↩ ↩2

  7. TrendForce プレスリリース, 2023年11月14日. https://www.trendforce.com/presscenter/news/20231114-11920.html — 2023年の世界MLCC需要を約4.193兆個、2024年を約4.331兆個と推計する(需要の推計で、出荷実績の統計ではない)。Wikipedia は2012年時点で年10¹²個超と記す。 https://en.wikipedia.org/wiki/Ceramic_capacitor ↩

  8. passive-components.eu, 2023年3月. https://passive-components.eu/murata-establishes-joint-venture-company-to-produce-mlcc-raw-materials/ — チタン酸バリウム生産の合弁 MF material の設立決議。出資は富士チタン工業55%・村田35%・石原産業10%で村田は少数株主。富士チタン工業は村田の仕入先の一社(村田の開示)。 https://corporate.murata.com/-/media/corporate/about/newsroom/news/irnews/irnews/2023/0317/20230317_e.ashx ↩

  9. eeNews Europe, 2026年5月19日. https://www.eenewseurope.com/en/ai-drives-mlcc-shortage/ — AIサーバー向けへの生産の振り向けで高容量MLCCが逼迫し、2021年のコロナ禍の供給危機を思わせると報じる。10〜15倍はサムスン電機の言。京セラの0402・47µF品の2025年末の生産開始も報じる。SK証券の最大8倍は 4 の記事。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6

この記事はAIを使用して執筆されました。内容には誤りが含まれる可能性があります。事実や数字の出典は脚注から確かめられます。