AI・信頼性・評価
手続き型生成と生成AIの共通点:難しいのは狙い通りに作る制御
- 手続き型生成
- 生成AI
- ゲーム開発
- No Man's Sky
- WaveFunctionCollapse
- PCGML
- ControlNet
- Stable Audio 3
- 制御
- 制約解法
- キュレーション
- 来歴
- 決定論
- 再現性
- パイプライン
- 知覚的ユニークさ
- 知覚的差異
- 条件付け
- 大域制約
- 後戻り
- 拡散モデル
- シード
- 大域リスタート
- 組織基盤
- ワークフロー設計
- オートミール
- 惑星
- Kate Compton
目次
手続き型生成(Procedural Content Generation、PCG)でも、画像・音楽・動画の生成AIでも、たくさん作ることはもう難しくない。規則とシード(乱数を作る出発点になる値)を与えれば、ゲームの地形や惑星は事実上いくらでも出てくる。同じ規則に同じシードを与えれば、同じものが決まって出る。プロンプトを一つ書けば、画像も曲も数秒で返ってくる。生成の能力は年ごとに上がり、出力の見た目の品質も上がり続けている。
それでも、出てきたものがそのまま使えるとは限らない。どれも少しずつ違うのに、並べると同じに見えることがある。作者が頭に描いた構図や条件に合わないこともある。制作の現場に持ち込むと、形式や版の管理が噛み合わず、人の手直しが要ることもある。
量が問題でなくなったのなら、作り手の時間と手間はどこに吸われているのか。生成の速さや量を上げる工夫と、狙いに合うものを得る工夫は、同じものではない。
大量に作ることが易しくなったとき、創作のボトルネックはどこにあるのか。
ボトルネックは生成ではなく、狙いどおりに作る制御にある。
作り手にとって難しいのは、狙った制約に合い、作者の意図に沿い、現実のパイプライン(素材を作ってからゲームなどの製品に組み込むまでの制作の工程)に収まる出力を出すことだ。最後の点について、2025年のゲーム開発の総説は、レビューした文献の範囲では、生成AIが人手の修正なしに組み込める成果物を出す証拠は見当たらないとしている。
1万個のマップから、使える100個を得る
※ この節の例は、説明のために作った架空のものです。
作る量を増やしても、使えるものを得る手間は減らない。手間を減らすのは、条件に合うものを生成の段階で出せるかどうかである。同じ生成器で、量を変えた場合と条件を課した場合を並べる。
ある生成器が、ゲームのマップを1日に1万個出せるとする。作者が欲しいのは「入口から出口まで歩いて通れて、前に見たものと同じ印象にならない」マップだけで、条件を付けずに出した1万個のうち、それを満たすのは100個だとする。満たす割合は1%で、使えるマップ1個を見つけるには平均100個を見ることになる。
一つ目の場合は、生成量を10倍の10万個に増やす。条件を満たすマップは1000個に増える。だが満たす割合が1%のまま変わらないなら、使える1個につき平均100個を見る比も変わらず、使える100個を得るには、やはり平均1万個前後を見て選ぶことになる。量を増やしても、選ぶ手間は減らない。
二つ目の場合は、生成量を1万個のまま、条件を生成の段階で課す。たとえば、マップを組み立てる途中で、入口から出口へ通れなくなる置き方を候補から外す。出てくるものが条件を満たしていれば、条件で選り分ける手間は消える。代わりに、条件を一つ足すたびに、それを満たす出力を探す仕組みが要る。
使えるマップを得る手間を決めたのは、生成量ではなく、条件を満たす出力を出せるかどうかだった。
1800京個の惑星と、やることの数
No Man’s Sky(2016年の宇宙探索ゲーム)は、惑星の数は作れても、その中身を作者が制御できなかった例である。手続き型生成でほぼ無限の惑星宇宙を作ったことで知られ、惑星の数は (約1800京)個に及ぶ1。発売からまもなく、退屈だという不満が出た2。開発元はその後も無償の更新を続け、内容は大きく変わっている3。New York 誌の Jake Swearingen は、同じ を三桁で丸めて、「1840京個のユニークな惑星は手続き的に生成できても、1840京個のユニークな”やること”は手続き的に生成できない」と書いた1。同じ記事は、人が舵を取らない以上、作られるものを制御する手段は生成規則の微調整しかなく、1840京個の惑星にはせいぜい途中の抜き取り検査しかできなかった、とも書いている1。
数学的に違うことと、人が違うと感じることは別である。Kate Compton はこれを「10,000杯のオートミール問題」と呼んだ。Compton は「私は1万杯の素のオートミールを簡単に生成でき、一粒一粒の位置も向きも違い、数学的には全て完全にユニークだ。だがユーザーにはおそらく、ただの大量のオートミールに見えるだけだ」と書く4。彼女は二つを区別する。一つは知覚的差異で、「前と同じには見えない」程度の違いであり、これは易しい。もう一つは知覚的ユニークさで、本当に記憶に残る違いであり、こちらははるかに難しい。彼女自身の言葉では、知覚的ユニークさこそが「本当の指標」であり、そしてそれは厄介なほど難しい4。ボトルネックは数ではなく、意味のある違いを生み出せるよう制御することにある。
ただし、2016年の反発には、手続き型生成の限界とは別に、期待と宣伝の側の理由も挙げられている。New Scientist の Douglas Heaven は、多くの人にとって期待が非現実的なほど高かったと書き、宣伝のスクリーンショットはゲームが出せる最良の場面を選んだものだったと指摘する2。同じ記事は、問題の一部は手続き型生成の仕組みが与えられた材料で作ることにあるともする。基本の形は膨大な数に組み合わせられても、蛇のような岩や六本脚の動物に二度、三度と出会えば、最初の驚きは損なわれるという2。
Swearingen 自身も、このゲームを否定したわけではない。先の New York 誌の記事は、当時のゲーム制作の本当のボトルネックは技術ではなく、価値あるものを作るのに大人数のチームが要ることだとし、16人で宇宙を作った例として本作を挙げる。そのうえで、同じ数学を使って、交易所や戦利品箱よりも面白いもので満たした宇宙を作れるかを次の問いに置いている1。記事はこのゲームを強く薦めており、数年後には画期として振り返られるだろうと書いている。ただしその見出しは「名作ではないとしても」と断っており、薦める理由は、少ない資源で広大な世界を作れることが、新しい種類のゲームを主流へ押し出すという見通しにある1。
分野の答えは「制御可能な生成」
学術のPCG(Procedural Content Generation)研究も、同じ道を「もっと作る」から「狙ったものを作る」へと進んだ。象徴的なのが、ゲームのマップ生成で人気の手法 WaveFunctionCollapse(WFC。周囲と矛盾しないタイルを一つずつ確定させ、全体を破綻なく埋めていく)だ。Karth と Smith は、この生成手法が制約解法、つまり「与えた条件を満たす答えを探す」仕組みそのものだと示した5。設計者が制約を置き、ツール側はそれを満たす解を探す。ここで作られているのは、制約で出力を制御できる生成器だ。
元の WFC は、矛盾に行き当たると後戻り(直前に確定させたタイルを取り消して別の候補を試すこと)をせず、最初からやり直すだけだ5。そのため、何度やり直しても解けないときに「解が存在しない」と判定できるわけではない。実際、著者らが試した Skyline のシナリオでは、「入力の全パターンを1回以上使う」という大域制約(マップ全体に一度に掛かる条件)を1本足しただけで数百回の衝突が起き、WFC を模して衝突のたびに最初からやり直す大域リスタートでは、1分の制限時間内に解が見つからなかった5。後戻りを許せば同じ制約はすぐに解ける。
別系統として、既存作品から機械学習で学ぶやり方(PCGML、Procedural Content Generation via Machine Learning)でも、使い道は作ることだけでなく、できたものを直す・良し悪しを判定する・分析することへ広がっている6。どれも、出てきたものから使えるものを選んで整える作業の一部に当たる。修復には既に実装例があり、良し悪しの判定は原典自身が今後の課題として挙げる段階にある6。
生成AIでも、価値は制御へ移った
テキスト→画像/音楽/動画は事実上無限に生成できる。だからこそ生成そのものはありふれ、難しいのは条件付け(狙いどおりに方向づけること)になった。その代表が ControlNet7である。ControlNet は「大規模な事前学習済み拡散モデルに空間的な条件制御を加える」もので、エッジ・深度・セグメンテーション・人物姿勢・スケッチで出力を操る。ここでの拡散モデルは、雑音から少しずつ画像を作る画像生成モデルを指す。プロンプトの文を書き直すだけでは輪郭・奥行き・姿勢のような空間的な配置を思いどおりに指定しにくく、ControlNet はそれを空間的な条件で指定できるようにした。
決定論・再現性は、その制御を支える工学的な土台だ。シードを固定すれば同じ手順は再現できるが、ビット単位まで同じ結果になるとは限らない。非決定的なカーネル選択や、既定では非決定的な実装で走る一部の演算、乱数の状態の違いが結果を変えるからだ8。だから本番環境では、その上に環境の凍結・プロンプトのバージョン管理・来歴(どの素材がどの手順で作られたかの記録)・製品へ組み込む前の検査を積み重ねる。
ボトルネックは、モデルでなくパイプライン
2025年のゲーム開発における生成AIの総説によれば、生成AIのツールは制作の工程とまだ噛み合っていない。総説は、ツールが「パッケージ化・バージョン管理された成果物、追跡可能な来歴、エンジン準拠フォーマットを要するゲーム制作のパイプラインと噛み合わない」と指摘する。そして、生成AIが人手の修正なしに統合可能な成果物を生み出せるという証拠は、レビューした文献の範囲では見当たらない、と述べる9。
同じ総説によれば、生成AIから実際に得られる価値を左右するのは、汎用のモデル能力ではなく、明示的なワークフロー設計・評価基準・組織基盤である9。価値が生まれるのは、成果物の制約を顧みずに生成だけを最適化したときではなく、統合の作業をパイプラインの中で見えるようにし、改善できるようにしたときだという9。
同じ総説は、統合を設計の中心に置く問題として扱い、エンジン内での検査・追跡・決定論的な再現と、受け渡し時点での来歴の記録を推奨する。組織設計は、日常的な利用の前提条件であって後付けの改善ではない、とも述べている9。「ボトルネック」は総説の語ではないが、人手の修正なしに組み込める証拠が無いことと、価値を左右するのがモデル能力ではないことを合わせると、ボトルネックはモデルそのものではなく、その周りの工学と組織にあると読める。
総説は手続き型生成についても、数十年の研究と実演を経ながら主流の開発環境での利用はいまも不均一でしばしば非効率だと述べ、生成AIの統合に時間がかかることの例として挙げている9。
生成の能力が上がっても、ボトルネックは制御に残る
「生成は解けた」と言い過ぎない。2025–26年に生成の能力は大きく上がった。動画生成は音声を同時に出すようになり10、音楽生成は Stable Audio 3 で最長380秒=6分超まで伸びた11。ただし380秒は開発元が公開するモデル表の仕様値で、モデル同士の優劣を測ったものではない。公平に言えば、生の品質は上がり続け、試作や着想のような初期の段階では価値を持ちうる。
先のゲーム開発の総説も、利得の出方を制作の段階ごとに分けている。効率の利得が出やすいのは、使い捨てと素早い反復が重んじられる初期の作業である。下流のアセットの組み込みと準備の段階では利得が出にくく、上流で浮いたように見えた時間の多くが、手直しと統合の作業に費やされるという9。同じ総説は、画像生成では、受け入れられる結果は一度の高精細な生成よりも、複数の出力からの選別で得られることが多いとする。研究全体のまとめでも、生成物を、組み込む前に専門家による選別(キュレーション)と編集を要する暫定物と位置づけている9。生の能力が上がっても、それだけではボトルネックは解けず、制御とキュレーションにあり続ける。
出典11件
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J. Swearingen「Why Everyone Should Play No Man’s Sky」New York, 2016年8月16日. https://nymag.com/intelligencer/2016/08/why-you-should-play-no-mans-sky.html — 惑星の数を18,446,744,073,709,551,616(約1844京)とし、人が舵を取らない生成は規則の微調整と途中の抜き取り検査でしか制御できないと書く。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
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D. Heaven「When infinity gets boring: What went wrong with No Man’s Sky」New Scientist, 2016年9月6日. https://www.newscientist.com/article/2104873-when-infinity-gets-boring-what-went-wrong-with-no-mans-sky/ — 反発の理由に、期待が高すぎたことと宣伝画像が選ばれた最良の場面だったこと、手続き型生成が与えられた材料で作ることの両方を挙げる。 ↩ ↩2 ↩3
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Hello Games「Release Log」No Man’s Sky 公式サイト, 閲覧2026-11-03. https://www.nomanssky.com/release-log/ — 開発元の更新記録。Foundation 更新を多くの無償更新の最初とし、Beyond は建築・NPC などを作り直し、Worlds は宇宙を作り替えたとする。 ↩
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Kate Compton「So you want to build a generator…」galaxykate. https://galaxykate0.tumblr.com/post/139774965871/so-you-want-to-build-a-generator — 「10,000杯のオートミール問題」として、知覚的差異と知覚的ユニークさを区別する。 ↩ ↩2
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Karth & Smith「WaveFunctionCollapse is Constraint Solving in the Wild」FDG, 2017. https://dl.acm.org/doi/10.1145/3102071.3110566 — WFCを制約解法と捉え、Skylineでは大域制約1本で大域リスタートは1分以内に解けず、後戻りなら速く解けると示す。元の画像生成には大域リスタートで妥当とする。 https://adamsmith.as/papers/wfc_is_constraint_solving_in_the_wild.pdf ↩ ↩2 ↩3
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Summerville ほか「Procedural Content Generation via Machine Learning (PCGML)」IEEE Transactions on Games, 2018. https://arxiv.org/abs/1702.00539 — 既存コンテンツをモデル化するので、生成に加えて修復・批評・分析に使えるとし、自動評価は今後の課題とする。 ↩ ↩2
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Zhang, Rao & Agrawala「Adding Conditional Control to Text-to-Image Diffusion Models」ICCV, 2023. https://arxiv.org/abs/2302.05543 — 事前学習済み拡散モデルに、エッジ・深度・セグメンテーション・姿勢・スケッチによる空間的な条件制御を加える。 ↩
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PyTorch「Reproducibility」公式ドキュメント 2.14, 閲覧2026-09-10. https://docs.pytorch.org/docs/2.14/notes/randomness.html — 完全な再現はリリースや環境をまたいで保証されないとし、cuDNNのアルゴリズム自動選択、FLASH_ATTENTIONの逆伝播、多プロセスのデータ読み込みを非決定性の源に挙げる。 ↩
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「Generative AI in Game Development: A Qualitative Research Synthesis」CHI 2026(arXiv, 2025). https://arxiv.org/pdf/2509.11898 — 10本の研究を統合し、人手の修正なしで統合できる成果物の証拠は無く、価値を左右するのはワークフロー設計・評価基準・組織基盤だとする。 https://doi.org/10.1145/3772318.3791206 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7
-
Google「Fuel your creativity with new generative media models and tools」2025年5月20日. https://blog.google/technology/ai/generative-media-models-io-2025/ — Veo 3 が初めて音声つきの動画を生成できるとする。開発元の発表で、第三者の比較評価ではない。 ↩
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Stability AI「Stability-AI/stable-audio-3」GitHub, 閲覧2026-08-05. https://github.com/Stability-AI/stable-audio-3 — モデル表で Medium・Large の Max length を380秒とする。前世代の Stable Audio 2.0 は最長3分で、公開は2024年4月。 https://stability.ai/news/stable-audio-2-0 ↩
この記事はAIを使用して執筆されました。内容には誤りが含まれる可能性があります。事実や数字の出典は脚注から確かめられます。