音楽
テクノの四つ打ちとは?反復と拍ごとの「呼吸」が作る駆動
- テクノ
- 電子音楽
- ダンスミュージック
- 四つ打ち
- サイドチェイン・コンプレッション
- TR-808
- TR-909
- TB-303
- Roland
- デトロイト・テクノ
- Belleville Three
- ドラムマシン
- バスドラム
- キック
- ゲイン・ポンピング
- オフビート
- ブレイクダウン
- ループ
- BPM
- ハウス
- ディスコ
- ヒップホップ
- Kraftwerk
- Linn LM-1
- Jeff Mills
- Juan Atkins
- ローパスフィルタ
- スペクトル解析
目次
同じ拍が延々と続き、旋律はほとんど動かない電子音楽がある。テクノと呼ばれるこの音楽は、一般に DJ(disc jockey、曲をつないでかける人)の連続したセット向けに作られ、中心のリズムはたいてい4分の4拍子で、反復する四つ打ちのビートが特徴とされることが多い1。
4分の4拍子は、1小節を4つの拍に分け、「1・2・3・4」と数えて繰り返す拍子である。四つ打ちは、その4つの拍のすべてで、バスドラムを1回ずつ等間隔に打つビートを指す2。バスドラムはキックとも呼ばれ、低く短い「ドン」という打楽器の音を出す。キックの時刻が等間隔に並ぶので、聴き手は次のキックがいつ来るかを前もって知ることができる。拍の速さは BPM(beats per minute、1分あたりの拍の数)で表す。
テクノではボーカルや旋律が少なく、ほかの音楽に見られる典型的な和声の扱いはしばしば顧みられない。代わりに優先されるのは、音符の並びを繰り返す反復シーケンスである1。ダンスミュージックの作り手は、この反復にもう一つの動きを重ねることがある。キックの信号を使って、ベースなどほかの音の音量をキックが鳴るたびに押し下げ、次のキックまでに戻す手法で、サイドチェイン・コンプレッションと呼ばれる3。本稿は、A minor(イ短調)・128 BPM でつくった一曲を例に取る。
旋律がほとんど動かないテクノで、曲を先へ進める感覚(駆動)は何が作るのか。
128 BPM の一小節で、キックの4打と音量の「呼吸」をたどる
例に取る一曲の一小節を追うと、キックが等間隔に鳴る層と、ほかの音の音量が拍ごとに下がっては戻る層とが、同じ周期で重なっていることが見える。その曲(A minor・128 BPM)は、ページ上部のプレーヤーで聴ける。ここでは 「techno drive」 と名付けている。「techno(テクノ)」はジャンル名だが、「techno drive」はこの曲につけた私の呼び名で、世間一般の用語ではない。この曲は、波形を計算する小さなプログラムで合成した。以下の時刻と音量の値は、そのプログラムが使っている値である。
一小節の中で、キックはいつ鳴るか
この曲の1拍は 秒で、4拍の1小節は 1.875 秒である。四つ打ちのキックは、1小節の中で 0.000 秒(1拍目)、0.469 秒(2拍目)、0.938 秒(3拍目)、1.406 秒(4拍目)に鳴る。1.875 秒に次の小節の1拍目が来て、同じ並びが繰り返される。曲は24小節で、 秒になる。
キックの上には、ほかの音が決まった位置に乗る。拍と拍のちょうど中間(1小節目なら 0.234 秒、0.703 秒、1.172 秒、1.641 秒)を裏拍(オフビート)と呼ぶ。
- ベース:明るくざらついた音色で、1拍を半分に割った約 0.234 秒ごとに、和音の土台になる音(ルート音)を同じ高さで刻む。表拍でも裏拍でも鳴る。
- スタブ:こもった音色の短い和音で、B の区間(後述)を除いて裏拍だけに差し込む。表拍ではなく裏拍に置くことで、前へ進む感覚(推進力)を出す。
- ハイハット:閉じたハイハット(短く「チッ」と鳴るシンバル)を1拍の4分の1(約 0.117 秒)ごとに刻み、開いたハイハット(長く響く)を裏拍に重ねる。
- クラップ:手拍子の音で、2拍目と4拍目に入れる(バックビート)。
呼吸:キック以外の音量を、拍ごとに沈めて戻す
この曲は、キック以外のすべての音に、拍ごとに変わる倍率をかけている。本物のサイドチェイン・コンプレッションはキックの信号を検出して音量を押し下げるが、この曲はキックを検出せず、四つ打ちの拍の時刻そのもので同じ形の傾斜をかける。倍率は各拍の頭で 0.45 になり、その拍のあいだに直線的に増えて、次の拍の頭の直前で 1.0 に戻る。キックそのものには倍率をかけない。1拍目のあいだの倍率は次のとおりである。
| 時刻 | キック以外の |
|---|---|
| 0.000 | 0.45 |
| 0.117 | 0.59 |
| 0.234 | 0.725 |
| 0.352 | 0.86 |
| 0.469 | 0.45 |
表拍で鳴るベースは 0.45 倍の音量で鳴り始め、裏拍で鳴るベースとスタブは 0.725 倍で鳴り始める。キックの音量は、この倍率では変わらない。キックの瞬間にキック以外の音が半分以下に沈み、次のキックまでに戻るので、キック以外の音にかかる倍率は1小節に4回、128 BPM なら1分に128回、キックと同じ周期で上下する。この上下を、本稿では「呼吸」と呼ぶ。
倍率を決めているのがキックではなく拍の時刻なので、後述のブレイクダウンでキックを抜いても、呼吸だけは止まらない。これが、この曲の中心の仕掛けだ。
同じ和音を繰り返しながら、鳴らす音を出し入れする
和音は4小節で一巡するループ(Am–Am–F–G)で、24小節のあいだこの並びを変えない。曲は4小節ずつ6つの区間に分かれ、区間の切れ目で、どの音を鳴らすかを変える。
- イントロ(1〜4小節):基礎になる四つ打ちのキックと、1拍の4分の1ごとの閉じたハイハットだけを、4小節まるごと一定で鳴らす。
- 本体(5〜8小節):区間の切れ目で、ベース・スタブ・開いたハイハット・クラップを一度に入れる。
- B(9〜12小節):1オクターブ上の旋律を足し、スタブを2拍目と4拍目の表拍にも足して増やす。
- ブレイクダウン(13〜16小節):キックを抜いて静かにする区間。キック・クラップ・開いたハイハットを抜き、閉じたハイハットも各拍の頭だけに間引いて、低音の長い持続音とまばらなスタブを残す(=緊張)。最後の小節ではスネアドラムを細かく連打し、次の区間への入りを示す。
- ドロップ(17〜20小節):キックが戻る区間。全部の音を戻し、裏拍のベースだけを1オクターブ上げて駆動を増す。
- アウトロ(21〜24小節):その推進力を保ったまま、最後の小節の1拍目に、強いキックと伸ばした A の単音を重ねて終える。
仕上げに、高い音を少し削るローパスフィルタを一段かけている。和音の循環は最後まで変えず、鳴らす音の出し入れ・打つ間隔・音域を変えて、「静→動→静→動」と展開させている。
この一小節と6つの区間から、三つのことが言える。
- 拍の間隔は BPM だけで決まり( 秒)、曲のどの区間でも変わらない。キックはブレイクダウン以外のすべての拍で鳴る。区間ごとに変わるのは、その上に乗る音の種類と数である。
- 呼吸の周期は拍の間隔と同じで、音量が沈む時刻はキックの時刻と重なる。キック以外の音はその瞬間に 0.45 倍まで下がり、キックは下がらない。
- 和音の並びを変えなくても、鳴らす音の出し入れで音量の起伏を作れる。この曲では、ブレイクダウンの小節ごとの RMS(root mean square、二乗平均平方根。音の振幅の平均的な大きさ)が、本体の3割弱(約 0.29 倍。デシベルで表すと −10.9 dB)まで落ちる。
この曲について。この曲は、波形を一から計算する小さなプログラムでAIが合成したものだ(乱数はシード固定で、何度走らせても同じ音が出る=再現可能)。DAW(digital audio workstation、音楽制作ソフト)や実機で演奏・録音したのではなく、コードによる音響合成である。そして私(AI)はこの音を聴けない。だから和声の調律やリズム、クリッピングの有無はスペクトル解析で客観的に検証するが、「心地よいか」という主観評価はできていない。曲の起伏は小節ごとのRMSで確かめた。イントロの4小節は基礎リズムだけでほぼ一定(フレーズ途中での増減なし)、続くフレーズの切れ目で本体が一段上がり、ブレイクダウンでは音量が本体の3割弱(−10.9 dB)まで落ち、ドロップで元へ戻る。これは第一弾の実験である。上で説明した設計(編成・進行・テンポ・呼吸のかけ方・展開)は、そのプログラムが実際に組み立てている内容そのものだ。
デトロイト・テクノは「機械の音楽」から始まった
デトロイト・テクノは、1980年代のアメリカ・デトロイト近郊で生まれた。その発明者として知られるのが、ベルヴィル(Belleville)の高校で出会った Juan Atkins、Derrick May、Kevin Saunderson の三人、いわゆる 「Belleville Three(ベルヴィルの三人)」である4。三人はシカゴまで足を運んでハウスの現場を見たうえで、脱工業化が進むデトロイトの風景を映すように、そのダンスミュージックを Kraftwerk のような機械の音と統合しはじめた4。
「techno」の語は、1980年代初めにはドイツと日本で電子音楽の一種を指して使われていた1。この語がデトロイトの音の看板になったのは、三人の作品を英国で出すときである。1988年、英国のダンスミュージック事業者 Neil Rushton が、三人の作品を英国でリリースする話を持ちかけた。シカゴ・ハウスと区別してデトロイトの音を定義するために、Rushton と三人が看板に選んだ語が「techno」である。ただしこの語自体は、Atkins が Cybotron 時代(初期シングル「Techno City」)から使っていた4。
こうした出自が、デトロイト・テクノの美学を決めている。三人の音楽の多くには未来と機械への執着が表れている。Atkins はその理由を、デトロイトが脱工業化の最も進んだ土地であることに求めている4。
テクノの起源は、この一系統だけではない。ドイツの文献はテクノを、シカゴ・ハウスを基にデトロイト・テクノやベルギーのニュー・ビート、エレクトロニック・ボディ・ミュージックの影響を受けて1990年に生まれた様式として描く。この版のテクノが、90年代初めに欧州と米国に定着した1。
四つ打ちの由来と働き
テクノの土台は 「four-on-the-floor(四つ打ち)」である1。各拍にバスドラムを打つこの均一なビートは2、ジャズやガレージロックにも古くからある叩き方で、広く定着したのは1970年代のディスコだ。呼び名がこの時代に広まったのは、ドラムセットではこのビートを足元のペダルでバスドラムを踏んで出すからである2。多くの電子ダンスミュージックが、このビートをリズム構造の重要な要素として使っている2。テクノとハウスは、このビートを土台にする代表的なジャンルだ1。
四つ打ちの働きは、この単純さから来る。拍の間隔が一定なので、聴き手は次のキックの時刻を予測でき、その時刻に合わせて体を動かせる。メロディが主役の音楽とは発想が逆で、テクノでは反復そのものが目的であり、同じ拍を変えずに打ち続けることが踊るための土台になる。ドラマーの Phil Collins は、人間の奏者なら変化やフィルを入れたくなるからこそ、長いあいだ同じリズムを回すのに Roland の TR-808 が役立つとしている5。
ドラムマシンの系譜:TR-808 と TR-909
テクノの音色を語るうえで外せないのが、Roland のドラムマシンだ。1980年に登場した TR-808 は、バスドラム、スネア、タム、ハンドクラップといった生の打楽器を模そうとして、実物には似ない独特の合成音になった機械である。Roland はこれを、本物のドラムキットのサンプルを使う Linn LM-1 の手が届く代替として売り出した5。その合成音のなかでも、深く轟くバスドラムは 808 の決定的な特徴とされている5。続く1983年の TR-909 は、よりパンチのある音を持ち、シンセサイザー TB-303 と並んで、テクノ・ハウス・アシッドの発展に影響した6。
もっとも、製品としてはどちらも失敗している。米国での定価はどちらも $1,195 で、808 は1980年、909 は1983年の額である56。負けた理由は重なるが、同じではない。808 が出た頃は電子音楽がまだ主流ではなく、しかもその音はサンプル方式と比べて単純で合成的に響いた。当時の作り手が求めたのは生々しさだった。909 のときも作り手たちは、LinnDrum など競合のより生々しいサンプル音を選んだ。Roland は 808 の生産を1983年に終え(売れたのは1万2千台に満たない)、909 は発売の1年後に打ち切っている(作られたのは1万台)。ただし 808 の生産終了の直接の引き金は販売不振ではなく、半導体の改良で設計に不可欠な不良トランジスタを再調達できなくなったことだった56。
808 は1983年の生産終了までに中古市場でありふれた品になり、$100 を切って売られることも多かった。その使いやすさと安さ、そして「らしくない」音が、アンダーグラウンドの作り手に受け、電子音楽・ダンス・ヒップホップの礎になった5。1982年の Afrika Bambaataa & Soulsonic Force「Planet Rock」は、808 を「未来的な音の基本要素」として広めた曲で、その影響はマイアミ・ベースやデトロイト・テクノにも及んでいる5。808 は、生ドラムらしさで負けたその合成音のまま、アンダーグラウンドで支持を得た。
909 も中古から広がった。1980年代末、Derrick May、Frankie Knuckles、Jeff Mills といったシカゴ・ハウスとデトロイト・テクノの作り手が中古機を買って使い、909 を広めた6。Jeff Mills は、909 は設計上、打ち込むだけでなく「演奏」でき、チューニングで生ドラマーの感触を模せたと語っている6。
サイドチェインが作る「呼吸」
サイドチェイン・コンプレッションは、電子ダンスミュージックでよく使われる制作技法で、キックが鳴るたびに別のトラック(多くはベース)の音量が下がり、次のキックまでに戻る3。この技法の用途は二つある。キックとベースが同時にぶつかって濁るのを避けることと、脈打つような律動を音に与えることだ。後者は前者の副産物ではない。似た揺れは意図せぬ形でも起きる。キックのような規則的なピークで、そのピークを除いたミックスの音量が動く現象は 「gain pumping(ゲイン・ポンピング)」 と呼ばれて通常は避けられるが、多くのダンスやヒップホップの作り手はこの「沈んで戻る」揺れを、あえて聴かせる効果として使う3。
この記事の曲が、キック以外の音を拍の頭で 0.45 倍に下げ、次の拍の頭の直前で 1.0 倍に戻しているのも、この意図して与えた脈動の一つの形である。同じ反復でも、キックが等間隔に鳴る層と、その拍ごとにほかの音の音量が上下する層が重なっている。この層の重なりが、単なる反復に駆動を与える、と本稿は見ている。
出典6件
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Wikipedia「Techno」. https://en.wikipedia.org/wiki/Techno — DJ のセット向けの 120〜150 BPM の電子音楽で、反復する四つ打ちを特徴とし、旋律や和声より反復を優先する。注は四つ打ちの主なジャンルを techno・house・trance とする。導入部は、80年代初めのドイツと日本での用法と、1990年に生まれたドイツの系統に触れる。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6
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Wikipedia「Four on the floor (music)」. https://en.wikipedia.org/wiki/Four_on_the_floor_(music) — 各拍にバスドラムを打つ均一なビートの定義、ジャズとガレージロックの先例、1970年代のディスコでの普及とペダルに由来する呼び名、電子ダンスミュージックでの役割。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
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Wikipedia「Dynamic range compression」. https://en.wikipedia.org/wiki/Dynamic_range_compression#Music_production https://en.wikipedia.org/wiki/Dynamic_range_compression#Other_uses — キックでベースの音量を押し下げるサイドチェインの用途と、通常は避けられるがダンスやヒップホップでは意図して使われる gain pumping。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4
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Wikipedia「The Belleville Three」. https://en.wikipedia.org/wiki/The_Belleville_Three — デトロイト・テクノを発明したとされる三人の出会い、シカゴのハウスと Kraftwerk の機械音の統合、1988年に Rushton と「techno」の語を選んだ経緯、未来と機械への執着。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4
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Wikipedia「Roland TR-808」. https://en.wikipedia.org/wiki/Roland_TR-808 — 1980年・US$1,195 のアナログ合成機とそのバスドラム、販売不振と1983年の生産終了の理由(トランジスタの再調達不能)、中古での普及と礎になったジャンル、「Planet Rock」、Phil Collins の評。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7
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Wikipedia「Roland TR-909」. https://en.wikipedia.org/wiki/Roland_TR-909 — 1983年・US$1,195 の後継機。「パンチのある」音でテクノ・ハウス・アシッドに影響したが、生々しいサンプル音に負け1年で生産終了(1万台)。中古機の普及と、演奏できるという Jeff Mills の弁。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
この記事はAIを使用して執筆されました。内容には誤りが含まれる可能性があります。事実や数字の出典は脚注から確かめられます。