In Silico

マテリアルズインフォマティクス・材料

材料が壊れる瞬間——ひびは「一番弱いキズ」から走る

2026/6/25 シリーズ「シミュレーションで材料を試運転する」 第3回 / 全3回

金属は曲がり、ガラスは割れる——その違いは原子の並びと「すべれるかどうか」にある。 このシミュレーション・シリーズの締めくくりに、材料が実際に壊れる瞬間を、原子の目線で覗いてみよう。融解・拡散に続く、3つめの基本現象=破壊だ。

引っぱって、壊してみた

下は、実際に走らせたシミュレーションだ。原子をきちんと並べた小さな結晶の板の、中ほどに小さなキズ(き裂の種)をひとつ仕込んでおく。そして板の上下をつかんで、ゆっくり上下に引き裂いていく。 色は原子の“仲間の数”——青はまわりを仲間に囲まれた内部の原子、赤は仲間を失った表面(=割れ口)の原子だ。

分子動力学:切り欠きから亀裂が走り、結晶が2つに割れるシミュレーション
実際に走らせた破壊のシミュレーション。引っぱると、板はしばらく伸びて耐えるが、やがて仕込んだキズから亀裂が開き、左右へ走って板を上下に裂いていく。色は原子の“仲間の数”で、青はまわりを仲間に囲まれた内部の原子、赤くなった原子が仲間を失った新しい割れ口だ。
720原子・2D・レナード–ジョーンズ模型/実コードで生成(再現可能)。

最初、板は引っぱりに耐えて伸びる。原子の結合がバネのように踏ん張る。 だがある限界で——キズの先端から、ひびが生まれる。そして一度走り出すと、止まらずに板を横切り、真っ二つに割れる。割れ口に並んだ原子は、仲間を失って赤く光る。

急所は、「一番弱いキズ」だった

ここで一番大事なのは、ひびが“どこから”始まったかだ。 板のあちこちでも、たまたまの一点でもない。わざと仕込んだ小さなキズ——一番弱い一点から始まった。

これは偶然ではない。引っぱる力は、キズや角の先端に集中する(応力集中)。だから材料は、全体の強さではなく、一番弱い欠陥のところから壊れる。 ガラスは表面の見えない傷から割れる——それが、ここでは原子の動きとして実際に起きている

だからこそ、ものづくりはキズを異常に恐れる。

「鎖は一番弱い輪で切れる」——材料も、まったく同じだ。

いつもの正直な注意

このシミュレーションにも、いつもの但し書きがつく。これは2次元の理想化で、原子どうしの力も単純なモデルだ。現実の破壊は3次元で、もっと多様な欠陥や、引っぱる速さ・温度の効果が絡む。だから、これは“なぜ・どこから壊れるか”の直感を与えてくれる試運転であって、現実の保証ではない。 最後は実験で確かめる——この姿勢は、融解でも拡散でも破壊でも変わらない。

シリーズを終えて

3回にわたって、原子の世界を計算で覗いてきた。融ける(固体→液体)、混ざる(拡散)、壊れる(破壊)。 どれも、原子一つひとつにニュートンの法則を当てて時間を進めるだけで、これだけ豊かな現象が再現できる。これが、材料を作る前に試運転する力だ。そして毎回最後に念を押したように、その力は「入れた物理の正しさ」と「実験での検証」に支えられて、はじめて意味を持つ。


このGIFは、実際に走らせた2次元分子動力学(720原子、三角格子のレナード–ジョーンズ結晶。左右は周期境界=端の自由表面の影響を消し、板の中ほどに“き裂の種”として面状に結合を切った欠陥を1つ仕込む。上下を把持してゆっくり引き離す=準静的、低温=脆性的、粘性減衰あり)の出力。決定論的(固定シード)。亀裂が必ずこの仕込んだ欠陥から開くことは、全行の開口量を測って確認している(最大開口=仕込んだ欠陥面、把持端ではない)。応力集中・欠陥起点の破壊・「最弱リンク」的な破壊は、破壊力学の標準的な知見。本シミュは2次元の理想化であり定性的な直感を与えるもの。

この記事はAIが下書きし、人間が編集・公開しています。