マテリアルズインフォマティクス・材料
「全部試せばいい」がなぜ無理なのか——材料の数を数えてみる
材料には、ひとつの根本的な見方がある。 材料の性質は、「何でできているか」と「どう並んでいるか」で決まる。
ならば話は簡単に思える。ありうる組み合わせを片っぱしから作って、試せばいい。 あとは、いちばん成績の良かったものを選ぶだけだ。
——この素朴な作戦が、なぜ現実には絶望的なのか。少しだけ数を数えてみよう。
元素を選ぶだけで、もう手に負えない
実用になる元素は、ざっと90種類ほど(周期表の安定な元素を大まかに数えて)。 材料は普通、それらを組み合わせて作る。では「どの元素を混ぜるか」を選ぶ場合の数は——
数えてみると、こうなる。「混ぜる元素を選ぶ」だけで——
- 2元素:約 4,000 通り
- 3元素:約 12万 通り
- 4元素:約 250万 通り
- 5元素:約 4,400万 通り
そして、これはまだ「どの元素か」を選んだだけだ。実際の材料は、ここに
- 混ぜる比率(A:B:C を 1:1:1 にするか 2:1:3 にするか……無数)
- 原子の並べ方(同じ成分でも結晶構造が違えば別物。ダイヤと黒鉛を思い出そう)
が掛け算で乗ってくる。候補の数は、あっという間に天文学的になる。 (参考までに、薬になりうる分子の種類は 10の60乗 規模と見積もられている1。無機材料も、桁こそ違えど「数え切れない」点は同じだ。)
作って試すのは、絶望的に遅い
数が多いだけなら、速く試せばいい。だが現実の実験は遅い。 ひとつの材料を合成し、結晶を整え、性質を測る——どんなに急いでも一日に数えるほどしか進まない。 仮に1時間に1個試せても、1年で約 8,760個。250万通りを試すだけで 約285年かかる。比率や構造まで入れたら、宇宙の年齢でも足りない。
実際、人類がこれまでに「作って確かめた」無機材料を集めた大きなデータベースでも、登録はせいぜい数十万件の規模だ2。ありうる空間の、ごくごく一部しか、私たちはまだ覗いていない。
だから「賢く探す」——それがこのシリーズのテーマ
ここで詰まる。全部は試せない。でも、宝はどこかにある。
この行き詰まりを破るのが、コンピュータの役割だ。やることは大きく2つ。
- 作る前に、計算で“当たり”を絞る——物理法則やデータから「これは良さそう/ダメそう」を予測し、実験する候補を一気に減らす。
- 賢く次の一手を選ぶ——闇雲ではなく、「次にどれを試すと一番学べるか」を選んでいく。
こうして「材料を、情報と計算の力で探す」流れは、しばしば「マテリアルズインフォマティクス」と呼ばれる。ただしこの言葉が指す範囲は広く、人によって使い方も違う——ここでは“計算で候補を絞り込む”その入り口を見た、というくらいに捉えてほしい。
出典
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「薬になりうる分子(drug-like chemical space)」の規模を約10^60とする見積もりは、Bohacek et al. (1996) 以来よく引用される代表的な推計(桁の目安として)。 https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/(SICI)1098-1128(199601)16:1%3C3::AID-MED1%3E3.0.CO;2-6 ↩
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無機材料データベースの規模:Materials Project(約15万件以上)、ICSD(約20〜30万件)など、いずれも「ありうる空間」に比べればごく一部。組み合わせ数 C(90,k) は初等的な計算による。 https://materialsproject.org/ ↩
この記事はAIが下書きし、人間が編集・公開しています。