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マテリアルズインフォマティクス・材料

温度とは?原子の揺れで分かる、材料が伸びる・溶ける・混ざる理由

2026/6/21 (更新: 2026/11/3)

  • 温度
  • 固体物理
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  • 拡散
  • 負の温度
  • リンデマンの融解則
  • 負の熱膨張
  • ゼロ点振動
  • 絶対零度
  • 原子核スピン
  • Debye 温度
  • 運動エネルギー
  • 熱伝導
  • ヘリウム
  • ケイ素
  • ゲルマニウム
  • 融点
  • 熱処理
目次
背景・問い・要点
背景

熱いお茶は熱く、氷は冷たい。温度の違いは手で触れば分かる。熱いものと冷たいものを触れ合わせておくと、熱は熱いほうから冷たいほうへ流れ、やがて両者の温度が揃う。温度は、この熱の流れる向きを決める量である。二つのものの温度が違えば熱は温度の高いほうから低いほうへ流れ、温度が揃えば流れは止まる。

温度は材料の姿も変える。温度を上げると多くの材料はわずかに伸び、さらに上げると溶ける。橋に伸縮継手が入っているのも、継目のあるレールにすき間があるのも、夏に伸びる分を逃がすためである。金属を熱して性質を整える熱処理や、半導体に不純物をしみ込ませる工程は、温度を上げると別の物質の原子がしみ込みやすくなることを使っている。

こうした変化は、材料の中の原子の動きと結びついている。金属やセラミックスのような固体の多くでは、原子が決まった間隔で規則正しく並んでいる。この並びを結晶と呼ぶ。結晶の中の原子は、決まった場所に並んだまま、その場で絶えず小刻みに揺れている。

問い

材料の中の原子の目線で見ると、温度とは何か。

要点

材料の中では、温度は原子の揺れの激しさとして現れ、熱いほど原子は激しく揺れる。揺れが大きいほど多くの材料は伸び、原子は別の物質の中へ移りやすくなり、揺れがさらに大きくなると原子の並びが崩れて材料は溶ける。

材料が伸びるのは、原子どうしが近づくと強く押し返し合い、離れるとゆるくしか引き合わないため、揺れが大きいほど平均の間隔が広がるからだ。ただし揺れの激しさは温度の一般的な定義ではない。原子核が持つ小さな磁石の性質(原子核スピン)のように取りうるエネルギーに上限がある系では、負の温度が実験で作られている。

モデル・例示

結晶の中の原子1個は、離れる側へ遠くまで揺れる

※ この節の例は、説明のために作った架空のものです。

原子どうしの力は近づく側で強く、離れる側で弱いので、揺れる原子は離れる側へより遠くまで行き、揺れの真ん中が隣から離れる。温めて揺れが大きくなるほどこのずれも大きくなり、原子の間隔が広がる。

結晶の中の原子1個と、その右隣の原子を考える。揺れが無いときの右隣との間隔を 0.250 nm(1 nm は 10−9 m10^{-9}\ \mathrm{m})とする。原子は揺れが無いときの位置の周りを往復し、右隣に近づいては押し返され、離れては引き戻される1。

近づく側では押し返す力が強いので、原子は短い距離で折り返す。離れる側では引き戻す力が弱いので、それより遠くまで行く。ある温度で、近づく側へ 0.010 nm、離れる側へ 0.012 nm まで揺れるとする。往復する範囲の真ん中は離れる側へ 0.001 nm ずれ、真ん中で測った右隣との間隔は 0.251 nm になる。

温度を上げると揺れが大きくなり、近づく側と離れる側の差も開くので、真ん中のずれが大きくなって間隔はさらに広がる。結晶の中のどの隣どうしでも同じことが起きるので、温めると結晶全体が伸びる。

この例から言えること

  1. 温度が高いほど原子は大きく揺れ、揺れが大きいほど原子の平均の間隔が広がる。
  2. 間隔が広がるのは、近づく側と離れる側で力の強さが違うからである。力が対称なら揺れの真ん中はずれず、この伸びは起きない1。

熱が温度の高いほうから低いほうへ流れる理由

熱が温度の高いほうから低いほうへ流れるのは、激しく動く原子が、動きの小さい隣の原子へ運動エネルギーを渡すからである。原子どうしは押し返し合い引き合う力でつながっているので、揺れは隣から隣へと受け渡され、全体の揺れの激しさが平らになる。この状態が「温度が等しくなる」ということだ。

この受け渡しが原子どうしの直接のやり取りで進むのは、セラミックスのような絶縁体の場合である。金属では、自由に動ける電子がおもにエネルギーを運ぶ。運ぶものが違っても、熱が温度の高いほうから低いほうへ流れ、温度が揃うと流れが止まる点は同じである。

伸びる:多くの材料に当てはまるが、例外がある

多くの材料が温めると伸びるのは、原子どうしの力が近づく側で強く、離れる側で弱いからである。温度を上げて揺れが大きくなるほど、揺れの真ん中は離れる側へずれ、原子の平均の間隔が広がる。

ただし、温めると伸びるのは多くの材料に当てはまる一般則であって、すべての材料に当てはまる法則ではない。原子の結合角(一つの原子から出る二本の結合のなす角)が曲がりやすいなど特定の構造条件を満たす一部の材料では、逆に温めると縮む「負の熱膨張」が起きる。構造がもっと単純なケイ素やゲルマニウムでも、低温域で同じ縮みが実測されている2。

溶ける:揺れの振幅で融点を見積もる規則と、その限界

揺れがさらに大きくなると、原子は決まった場所に留まれなくなり、並びが崩れて自由に動き回る。この状態が液体で、その境目の温度が融点である。融点が近づくにつれて、熱膨張そのものが加速していく1。

揺れの振幅がある限界に達すると溶けるとみて融点を見積もる考え方を、「リンデマンの融解則」と呼ぶ。温度を上げると往復する範囲の幅が広がるので、その揺れの大きさを溶けるかどうかの目安に使う規則である。Debye 温度は、結晶の中の原子の揺れを扱う Debye モデルで振動数に置く上限を、温度の単位に直した量である。リンデマンの融解則は、融点を Debye 温度と体積で結ぶ公式の形で書かれる。その公式は、固体ヘリウムを圧縮して Debye 温度が3倍余り違う融点どうしを比べても、ほぼ同じ定数で成り立った3。

公式の定数が揃っても、公式の根拠にした考え方まで確かめられたことにはならない。同じ測定値から別の研究者が見積もったところでは、融点での振幅は一定ではなく、低温側では古典値の3倍に達する。古典値は、量子力学の効果を入れずに見積もった振幅である。そのため「振幅が限界に達すると溶ける」という素朴な論法のほうは、ヘリウムでは成り立たない3。

混ざる・しみ込む

温度が高いほど原子1個の運動エネルギーの平均は大きく、原子は激しく揺れ、別の物質の中へも移りやすくなる。背景で挙げた熱処理や、半導体に不純物をしみ込ませる工程は、この変化を使っている。

冷やしても揺れは0にならない

運動エネルギーの平均が温度に比例するのは、原子の運動を古典力学で扱えるほど高い温度での関係である。温度を下げると原子の揺れは小さくなり、絶対零度(ケルビンという温度の単位で 0 K、−273.15 ℃)で最も小さくなる。量子力学の効果により、絶対零度でも揺れは0にならない。この残る揺れをゼロ点振動と呼ぶ。

ゼロ点振動の大きさは、原子が軽いほど大きくなる。ヘリウムは原子そのものが軽く、しかも原子どうしを引き合う力がとても弱い。弱い引力と大きなゼロ点振動が重なるので、ヘリウムは絶対零度まで冷やしても自分では固体になれない。他の希ガスで同じことが起きないのは、この二つが同時に極端なのがヘリウムだけだからだ。圧力をかけて原子を近づけない限りヘリウムが液体のままであることは、古くから測定で知られている3。

揺れの激しさでは温度を定義できない系

ここまでの「温度は原子の揺れの激しさとして現れる」という見方は、材料の原子の運動にはよく当てはまるものの、温度の一般的な定義そのものではない。それが分かるのが「負の温度」である。負の温度の状態を実際に作り出せるのは、取りうるエネルギーに上限のある系に限られる。

原子核スピン(原子核が持つ小さな磁石の性質)は、磁場の中で取れる向きの数が限られ、向きごとにエネルギーの値が決まっている。この一つ一つの値をエネルギー準位と呼ぶ。原子核スピンのように、等間隔のエネルギー準位が有限個しかない系が、エネルギーに上限のある系にあたる。こうした系で、スピンが各準位へどう分かれて入るかを考える。最も起こりやすい分かれ方はボルツマン分布と呼ばれ、温度はその分かれ方を決める量として現れる。スピン1個あたりの平均エネルギーが準位の中央より低ければ温度は正、高ければ負になる4。運動エネルギーのように上限の無いエネルギーでは、負の温度の状態は原理的に作れない。

原子核スピンが追随できないほど急激に磁場の向きを反転させると、スピンの集団が新しい磁場と逆を向いたまま取り残される。1951年に報告された実験は、そう予想したうえで反転した磁化を記録している。著者らはこの反転した状態を負の温度で記述できると考え、単一の温度で足りるかはまだ確かめる必要があるとしつつ、結晶を地球磁場の中へ通しても反転した磁化が保たれたことをその根拠に挙げている。反転したスピン系は、内部エネルギーを失いながらエントロピーを増やしていく。負の温度の状態は、正の無限大の温度よりもさらに「熱い」。正の温度の相手に触れさせると、この状態は必ずエネルギーを渡す側にまわる4。


古典力学で扱える高温域での温度と粒子の平均運動エネルギーの比例関係、熱膨張・融解・拡散の温度依存、絶対零度とゼロ点エネルギーは、いずれも標準的な熱力学・統計力学・固体物理の知見に基づく。熱伝導の担い手(絶縁体では格子振動、金属では電子)と、ヘリウムが常圧で固化しない理由(軽い質量と弱い分散力の重なり)も同様である。

出典4件
  1. V. A. Drebushchak「Thermal expansion of solids: review on theories」J. Therm. Anal. Calorim. 142, 2020. https://link.springer.com/article/10.1007/s10973-020-09370-y — 原子間ポテンシャルの導出が融点近傍の膨張の加速まで記述するとする総説。調和振動子の限界は Luchi ほか。 https://doi.org/10.1088/1361-6552/ad756a ↩ ↩2 ↩3

  2. Schick & Rappe「Classical model of negative thermal expansion in solids with expanding bonds」Phys. Rev. B 93, 2016. https://arxiv.org/abs/1604.07785 — 負の熱膨張の理論モデル。Si・Ge の実測は Sparks & Swenson。 https://doi.org/10.1103/PhysRev.163.779 ↩

  3. Dugdale & Simon「Thermodynamic properties and melting of solid helium」Proc. R. Soc. A 218, 1953. https://doi.org/10.1098/rspa.1953.0105 — 融解公式の定数はほぼ一定だが融点の振幅は一定でない。常圧で液体のままの点は Simon & Swenson。 https://doi.org/10.1038/165829a0 ↩ ↩2 ↩3

  4. E. M. Purcell & R. V. Pound「A Nuclear Spin System at Negative Temperature」Physical Review 81, 1951. https://doi.org/10.1103/PhysRev.81.279 — 磁場の急反転で反転させた核スピン系を負のスピン温度で記述した実験で、単一の温度で足りるかは要確認と著者が留保する。 ↩ ↩2

この記事はAIを使用して執筆されました。内容には誤りが含まれる可能性があります。事実や数字の出典は脚注から確かめられます。