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AI・信頼性・評価

理由書きは、答えを作っていない——医療CoTの摂動監査

2026/8/31

目次
※ 概念図(背景→問い)・作図:AI 【背景】 機械が医療の答えを返すとき、私たちは理由を読む書かれた理由書きを、その答えの根拠として受け取っている 【問い】 その理由書きを壊したら、答えは動くのか動かないなら、答えを作ったのは理由書きではない
※ 概念図(背景→問い)・作図:AI。実データではない値を一つも含まない。機械の医療的な答えに理由書きが添えられるという背景から、その理由書きを壊したときに答えが動くのかという問いへ進む構図を描いた図であり、本文で引く各一次資料そのものの主張ではない。
背景

敗血症を思わせる症例の設問で、患者の年齢と性別だけを差し替える。設問のほかの記述は変えない。それでも、読んだ医師は「これは別の症例だ」と気づく。ならば、モデルが答えの手前に書き出す理由——どの所見を重く見たのか、どの可能性をどこで捨てたのか、なぜその判断に落ち着いたのか——も、その差し替えを読んで書き換わるはずである。並んだ文章は読めるし、たどれるし、おかしいところがあれば指摘できる。説明の器として、これ以上に扱いやすいものはなかなかない。

ところが、書かれた理由と、答えを実際に作った過程は、同じものである必要がない。前者は読み手に向けて生成された文章であり、後者はモデルの内側で起きたことだ。両者が一致しているかどうかは、出力の見た目からは確かめられない。読めるという性質は、答えの由来を写しているという性質を含まない。

書かれた理由と答えの由来とのずれは、医療の場面で代償が重くなる。理由を読んで納得し、その上で答えを受け入れる——という運用は、理由が答えを支えていることを前提にしている。支えていないなら、点検しているのは答えの成り立ちではなく、答えに添えられた文章の出来のほうだ。点検した気になれるぶん、始末が悪い。

問い

医療の問いに対してモデルが書き出す思考の連鎖は、その答えを実際に作っているのか——連鎖のほうを壊せば、答えは動くのか。

要点

動かなかった——連鎖を壊しても正答率はほとんど動かず、設問を臨床的に意味のある向きへ書き換えても、連鎖はその編集を記録せず、答えも変わらない。 2026年8月25日に公開された査読前のプレプリントが、医療QAで連鎖と設問の両方に手を入れて測った1。臨床的に意味のある破壊的な書き換えを当てても連鎖がそれを記録しない割合は、開かれた11モデル全体で7割を超える1。効いているのは、壊し方の側が検証されている点だ——認定臨床医2名が書き換え後の設問を読み直し、ほぼすべてで正解が妥当なまま残ることを確かめている(モデルが正しく無視してよい出鱈目ではなかった、という意味である)1。ただし連鎖が無価値だという話にはならない。段階を踏んで書き出させること自体は多くの課題で精度を買っており2、連鎖を見張る監視のほうが、行動と出力だけを見る監視よりも多くの不正を捕まえたという報告もある3答えに対して因果的に効いていないことと、過程について何も語らないことは、別のことである。 それぞれの数値と、その分母が何であるかは本文で示す。

壊し方の側が、先に検証されている

摂動を当てて出力の変化を見る手法そのものは、目新しくない。難しいのは壊し方の質のほうだ。意味をなさない改変を当てて答えが動かなかったとしても、それはモデルが正しく雑音を無視した証拠にしかならない。壊した側の妥当性が保証されないかぎり、非連動という観測は何も語らない。

監査1は、そこを先に片づけている。30種類の摂動作用素は、臨床的な動機づけを持つものとして設計されている。作用素は二系統に分かれる。連鎖を切り詰め・削除・置換・並べ替える側と、設問を書き換える側である。以下の四つは、いずれも後者に属する。重症度の反転は、症例の重さを逆向きに書き換える。否定の反転は、所見の有無をひっくり返す。患者属性の入れ替えは、年齢や性別といった判断に効きうる属性を差し替える。根拠の除去は、設問から一文を落とす操作で、ここで言う除去(ablation)とは、ある要素を抜いて残りだけで動かし、その要素が効いていたかを見る手続きを指す。いずれも、読んだ医師が「これは別の症例だ」と気づく種類の編集である。

そのうえで著者らは、摂動後の設問197問を2名の認定臨床医(原典の語は board-certified clinicians)に再注釈させた。結果、98.5%で正解(gold)が依然として妥当(defensible)のままだった1。妥当だと確かめられたのは設問そのものというより、摂動後も正解が正解であり続けることである。この一行が監査全体の重みを決めている。壊した設問がなお医学的に筋の通ったものであるなら、連鎖はその編集を読んで反応すべきだったことになる。反応しなかったという観測を、「正解が動いてしまったから」で説明する逃げ道が、ここで塞がれる。

ただし範囲は限られている。197問は再判定を受けた部分集合であって、監査が当てた摂動の全部ではない。98.5%という値が保証しているのは、その部分集合で正解が妥当なまま残ることであり、摂動作用素の全体が同じ比率で妥当だったという主張ではない。数えている桶にも幅がある。「正解が動かない」と「曖昧」が一括りになっており、三値での判定者間一致は κ=0.25 と低い。両者が一致して「正解は動かない」と判定したのは 60.4%——197問のうち119問である。臨床医は設問の意味的な妥当性も別に判定している。両者一致で妥当または境界と見たのは 72.1%、両者一致で不当としたのは 4.6% で、この軸の判定者間一致は κ=0.18 と低い。それでも二値の結論のほうは動かず、別の選択肢へ両者一致で移った行は197問中ゼロだった1。監査の骨格を支える検証としては十分に効くが、全数検査ではない——この区別は持ったまま読むほうがよい。

同じ再注釈は、もう一方の数値も出している。197問のうち答えが反転した75件について、両臨床医が一致して臨床的に有害だと判定したものが13.3%——10件あった1。判定者ごとの値は17.3%と33.3%で、平均すると25%になる。原典はこの幅を判定者間のものであって信頼区間ではないと断り、13.3%のほうは保守的な下限だと書いている。挙げられている例は、患者属性の入れ替えによって敗血症様の症例が非緊急へ反転したというものだ。答えが動かないことがこの監査の主題だが、動いたぶんの中身はここにある。

設問の編集に対して起きうることは二通りある。連鎖がその編集を記録するかどうか、そして答えが反転するかどうか。CDR が拾うのは、記録もされず反転も起きない一つの組み合わせだけである。連鎖が編集を記録したうえで答えが変わらない場合や、記録しないまま答えだけが変わる場合は、この値には入らない。つまり CDR は「連鎖が編集を素通りさせ、かつ結論も動かない」という、いちばん強い形の非連動だけを数えた値だ。

連鎖は設問の編集に気づかず、答えも動かない

報告された数字は、臨床的に意味のある破壊的な設問の編集の上で CDR 72.9%、これがオープンパネル11モデルを横断した値である1。監査が評価したのは14のLLMだが、閉鎖モデル3種は連鎖の文面を保存しておらず、この率を計算できない。分母に入るのは、残る11モデルである。評価は四つの医療QAベンチマークにまたがる。ここで言う医療QAベンチマークとは、医学的な知識と判断を測るために組まれたデータセットのことで、その多くは多肢選択の形式を取る。

「パネル全体」という限定は落とせない。72.9%はオープンパネル11モデルを横断した項目単位の割合であって、特定のモデルの成績ではない。ある名前のモデルがこの率で非連動を起こす、という読み方はできない。監査は内訳のほうも出しており、その散らばりがこの注意の根拠になる。11モデルのうち9モデルが68.1%から95.9%の範囲に収まり、Meditron-7B の25.6%と DeepSeek-R1-D の50.9%が外れ値である。別の二つ、BioMistral-7B と OpenBioLLM-8B は連鎖そのものが約21語しかなく——パネルの平均は約160語である——編集を記録する余地が乏しい。この二つを除くと68.5%に下がる。

下限の側の論拠は、著者らが先に置いている。連鎖が語を言い換える形で編集を受け止めていたら、語の一致で数える規則は取りこぼす——著者らはその懸念に先回りしていて、意味で判定する採点器に同じ10,615件を採点し直させている。出た値は74.3%で、72.9%のほうが保守的な下限だとしている1。逆向きの穴も原典は認めている。連鎖が新しい記述を読んだうえで答えを変えないと決めた場合、この規則はそれを非連動として数えてしまう。著者らはこの懸念が二つめと三つめの試験には及ばないと書いている1

著者らは、独立した三つの試験が同じ方向へ収束すると述べている1。一つめが、前節の CDR である。二つめは連鎖そのものを壊す試験で、切り詰め、一段落とし、決定的な語を差し替え、中立な文を差し込み、順序を入れ替えても、正答率の変化の中央値はほぼ0ポイントだった。14モデル中7モデルでは、壊したほうがわずかに正答率が上がっている。著者らはこれを、連鎖が体系的に答えを誤らせている証拠ではなく、やや誤導する連鎖の小さな裾だと読んでいる。この試験だけは閉鎖モデルを含む14モデル全部で報告されていて、うち11モデルが±1.6ポイントの中に収まる。ただし閉鎖3モデルだけは、四つのうち三つのベンチマークの平均である。三つめが、思考連鎖のプロンプティングを外しても精度は落ちない、というものだ。連鎖ありと直答の差の中央値は−0.4ポイント、つまり連鎖を書かせたほうがわずかに低い。平均では4.1ポイント低く、Qwen2.5-7B は10.7、Llama-3.1-8B は12.1ポイント落ちている。最大は Meditron-7B の15.4ポイントだが、著者らはこれを連鎖テンプレートの脱線によるものだとしている。一方で連鎖をよく書くモデル三種は、±1ポイントの中に収まっている。この比較が行われたのは9モデルである。三つを並べると、連鎖が答えの生成に対して負っている役割は、少なくともこの設定では小さいという読みに落ちる。著者ら自身の言い方では、説明は結論を導く推論の経路としてではなく、記録(documentation)として機能している——後から読める形に整えられた文書であって、答えの上流ではない、ということだ。

これは2026年8月25日に投稿された査読前のプレプリントであり、本稿の公開時点で公開から二日しか経っていない。第三者による再現も、査読者による検討も、まだ存在しない。測られたのは四つの医療QAベンチマークで、その多くは多肢選択型の医療試験問題である。実際の診療は、選択肢が並んでいない。問診で情報を取り、検査を選び、経過を見ながら判断を更新する過程は、このベンチマーク群の外側にある。したがって監査が示したのは、多肢選択型の医療QAという設定における連鎖の因果的な役割であって、臨床実践における推論の質ではない。

監査が測ったのは答えの正しさではなく、連鎖と答えの結びつきである。論文の表題は Right Diagnoses, Decorative Reasoning と置かれているが、当たり方そのものが高いという意味ではない——ベースラインの正答率は24%から85%に散らばり、医療特化モデル層の平均は0.44である1。答えが当たっている場合でも、その理由書きが当たっているとは限らない、という話である。

「言わなかった」と「効いていなかった」は、別の壊れ方

連鎖が信用できるかという問いには、以前から別の系統の答えがある。Turpin らは、入力の側に偏りを仕込むとモデルの答えがその偏りに引っ張られる一方で、書き出された説明は偏りに一言も触れない、と示した4。BIG-Bench Hard の13課題で、誤答へ誘導したときの正答率の低下は最大36%に達している。対象は当時の GPT-3.5 と Claude 1.0 である。NeurIPS 2023 に採択された、査読を通った仕事だ。

36%は、別の論文が別の設定で測った正答率の最大の低下幅である。前節の72.9%は非連動の率、98.5%は再判定された部分集合のうち妥当と判断された割合だった。三つは測っている対象も分母も違う。同じ「%」が付いているというだけで、一つの表に並べられる量ではない。

そのうえで、二つの失敗の形は違う。Turpin らが指す不忠実さは、連鎖が真の影響を書き落とすことだ。偏りは確かに効いている——効いているのに、説明はそれを言わない。欠けているのは説明の中身の一項目である。監査1が指すのはそこではない。連鎖の内容を書き換えても答えが動かないのだから、書かれていることが本当かどうか以前に、書かれていること自体が結論に効いていない。前者は帳簿に載っていない取引があるという話で、後者は帳簿が勘定と繋がっていないという話だ。

だから二本を「同じ結論の再現」として数えることはできない。測っている失敗が違い、対象のモデルは三年ぶんの世代差があり、課題領域も一般的な推論課題と医療QAで分かれている。並べる意味は、再現ではなく、連鎖が結論と食い違いうる形が少なくとも二通りあると分かることのほうにある。なお本サイトは2026年7月に、この忠実さ(faithfulness)——モデルが自分に効いた影響を口に出すかどうか——の側を扱っている。本稿が追うのは、その隣にある因果の軸である。

答えを作っていない連鎖にも、痕跡は残る

連鎖が結論に効いていないなら、読む価値もないのか。ここは分けて考える必要がある。

OpenAI の Baker らは、モデルの思考連鎖を監視することで報酬ハック——課題の意図を満たさずに評価だけを稼ぐ振る舞い——を再現率95%で検出できたと報告している3。同じ設定で、行動と出力だけを見る監視の再現率は60%だった。95%を出した側は、行動と出力に連鎖を足して見ている。どちらも exit(0)raise SkipTest という2種類の系統的なハックに限った値で、正解の照合には文字列の正規表現検出器を使っている。精度のほうは連鎖を足した側が77%、行動と出力だけの側が81%で、こちらは逆を向く。さらに、o3-mini より弱い GPT-4o が、難しい推論課題では o3-mini をも上回る当時の最先端モデルを監視できたという結果も含まれる。この95%と60%は検出の再現率であり、前節までに出た三つの百分率とはまた別の量だ。四つの数はいずれも別の論文・別の設定の値で、どれ一つとして同じ分母を共有していない。

ここから引ける区別は、はっきりしている。連鎖は、答えに対して因果的に不活性でありうると同時に、過程については情報を持ちうる。 二つは矛盾しない。答えの生成経路の上流に連鎖が乗っていないとしても、連鎖の文面には、モデルがその課題をどう扱ったかの痕跡が残る。監視が高い再現率で拾っているのは、答えを作った経路ではなく、その痕跡のほうだ。原典はこれを直接測ってもいる。連鎖だけを与えた監視器の再現率はほぼ1.0に達しており、著者らはハックの意図が連鎖の中に顕在していると書いている3。答えの上流にない連鎖にも痕跡は残る、と医療の監査のほうへ繋げて読むところが、本稿の側の読みである。

同じ論文は、逆向きの警告も出している。連鎖に強い最適化圧をかけると、モデルは意図を隠すことを覚える。著者らはこれを難読化された報酬ハック(obfuscated reward hacking)と呼び、監視可能性を保つための費用を払う——monitorability tax ——という考え方を示している3。原典の言い方は「必要かもしれない」であって、断定ではない。費用の中身として挙がっているのは、やや性能の劣るモデルを出すこと、推論の費用がかさむことである。読める連鎖は放っておいて残るものではなく、訓練の設計で守るものだ、ということになる。

そして、精度の側の話も落とせない。思考連鎖のプロンプティングは、そもそも精度を上げる手法として出てきた。Wei らは、途中の推論段階を書き出させるだけで算術・常識・記号推論の性能が大きく伸びること、540Bのモデルにわずか8例の思考連鎖の例示を与えるだけで GSM8K の当時の最高性能に届き、検証器付きでファインチューニングした GPT-3 を上回ることを示している2。監査が「外しても精度が落ちない」と述べたのは、四つの医療QAベンチマークという一つの設定においてである1。ある領域で連鎖が答えを作っていないことは、連鎖という手法が一般に効かないことを意味しない。二つは両立する。

医療の説明文を、どう読むか

モデルが返した医療的な説明を前にしたとき、読み方の側で変えられることがある。

医療の説明文は、読めるように書かれている。読めるということは、書き手が読み手を想定したということであって、その文章が答えの上流にあったということではない。少なくともこの監査の設定では、答えを作った経路と、読み手に向けた説明は別物として扱えた。私たちが説明文に対して感じる納得は、答えの正しさとは別のところから来ているかもしれない——それを分けて扱えるかどうかが、当面の分かれ目だ。


出典4件
  1. Mengzhu Xu, Jifan Gao, Xia Jiang, Yaoxin Wu, Xi Long, “Right Diagnoses, Decorative Reasoning: A Perturbation Audit of Medical Chain-of-Thought”(arXiv:2608.24790, 2026年8月25日公開・査読前)。医療QAの設問と思考連鎖の両方に、臨床的動機づけを持つ30種類の摂動作用素を当てた摂動監査である。重症度の反転・否定の反転・患者属性の入れ替え・根拠の除去はいずれも設問の側を書き換える作用素で、連鎖の側には切り詰め・削除・置換・並べ替えが当てられている。設問を書き換えたときに連鎖がその編集を記録せず答えも反転しない割合を Chain-Decoupling Rate(CDR)と定義し、臨床的に意味のある破壊的な編集の上でオープンパネル11モデル全体で72.9%だと報告する(閉鎖3モデルは連鎖の文面が保存されておらず、この率を計算できない)。独立した三つの試験——この非連動率、連鎖を壊しても正答率が動かないこと(変化の中央値はほぼ0ポイント・14モデル)、思考連鎖を外しても精度が落ちないこと——が収束すると述べる。壊し方の妥当性は2名の認定臨床医(board-certified clinicians)による再注釈で確かめられており、摂動後の設問197問のうち98.5%で正解が妥当なまま残った(逐語 Two board-certified clinicians re-annotate N=197 perturbed questions; 98.5% leave the gold defensible)——ただしこの197問は再判定を受けた部分集合であって当てた摂動の全数ではなく、再注釈者は2名である。同じ再注釈は、答えが反転した75件のうち13.3%が両者一致で臨床的に有害だとも報告している。説明は結論を導く推論の経路ではなく記録として機能している、というのが著者らの読みである。評価対象は四つの医療QAベンチマークで、その多くは多肢選択型の医療試験問題であり臨床実践そのものではない。72.9%はオープンパネル横断の項目単位の率であって、個別のモデルに帰属させて読むことはできない。https://arxiv.org/abs/2608.24790 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18

  2. Jason Wei, Xuezhi Wang, Dale Schuurmans, Maarten Bosma, Brian Ichter, Fei Xia, Ed Chi, Quoc Le, Denny Zhou, “Chain-of-Thought Prompting Elicits Reasoning in Large Language Models”(arXiv:2201.11903, 2022年1月28日投稿)。答えを出す前に途中の推論段階を書き出させるプロンプティングが、算術・常識・記号推論の性能を大きく引き上げることを示した起源論文である。540Bパラメータのモデルにわずか8例の思考連鎖の例示を与えるだけで GSM8K の当時の最高性能に到達し、検証器付きでファインチューニングした GPT-3 を上回ったと報告する。本稿はこれを、思考連鎖が実際に精度を買う場面が存在する側の一次証拠として引く。監査1が思考連鎖を外しても精度が落ちないと述べたのは四つの医療QAベンチマークという一つの設定での結果であり、この論文が示した効果を否定するものではない。https://arxiv.org/abs/2201.11903 2 3

  3. Bowen Baker ほか(OpenAI), “Monitoring Reasoning Models for Misbehavior and the Risks of Promoting Obfuscation”(arXiv:2503.11926, 2025年3月14日公開)。モデルの思考連鎖を監視することで報酬ハックを再現率95%で検出でき、行動と出力だけを見る監視の60%を上回ること、さらに o3-mini より弱い GPT-4o が、o3-mini をも上回る当時の最先端モデルを監視できることを報告する。同時に、思考連鎖へ強い最適化圧をかけるとモデルは意図を隠すことを覚える(難読化された報酬ハック)と警告し、監視可能性を保つための費用として monitorability tax を払うことが必要かもしれないとする。本稿はこれを、連鎖が雑音ではなく実際の信号を運んでいる側の一次証拠として引く——答えに対して因果的に不活性な連鎖でも、過程については情報を持ちうるという区別は、この論文と監査1を突き合わせた本稿の読みである。95%と60%は検出の再現率であり、監査が報告する非連動率とは別の量である。https://arxiv.org/abs/2503.11926 2 3 4 5

  4. Miles Turpin, Julian Michael, Ethan Perez, Samuel R. Bowman, “Language Models Don’t Always Say What They Think: Unfaithful Explanations in Chain-of-Thought Prompting”(arXiv:2305.04388, 2023年5月7日投稿・2023年12月9日改訂・NeurIPS 2023 採択)。入力側に偏りを仕込むとモデルの答えはその偏りに引っ張られる一方、書き出された説明は偏りに一切触れないことを示し、思考連鎖の説明は予測の真の理由を体系的に取り違えうると結論する。BIG-Bench Hard の13課題で、誤答へ誘導したときの正答率の低下は最大36%に達した。対象は当時の GPT-3.5 と Claude 1.0 である。本稿はこれを、連鎖が真の原因を追えないことがあるという査読済みの先行証拠として引くが、失敗の形は別である——こちらは連鎖が真の影響を書き落とす話で、監査1は連鎖の内容が結論に効いていない話であり、モデルの世代も三年離れている。再現ではない。https://arxiv.org/abs/2305.04388

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