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脳の全配線図を描いても、脳は分からない

2026/6/17

2024年10月、神経科学の金字塔が立った。成体ショウジョウバエの全脳コネクトーム——約139,255個のニューロンと、その間の5,000万を超えるシナプスの完全な配線図(FlyWire)が、9本の論文として『Nature』に発表された。200人超・50研究室が関わった、これまでで最大かつ最も完全な動物脳の配線図だ。

これは「脳を丸ごと測り尽くす」という夢の、ひとつの到達点である。だが——それでも、脳がどう動くのかは分からない。この事実こそが、本当に興味深い。

30年前に、答え合わせは終わっていた

実は前例がある。線虫 C. elegans だ。たった302個のニューロンしか持たないこの生き物の全配線図は、30年以上前に完成している。神経科学で最初に「コネクトームを完全に解いた」生物だ。

では、その302個の配線が分かったことで、線虫の行動は説明できるようになったか。答えは——ほとんどできていない。302個の神経で線虫は方向転換し、迷路を抜け、刺激に適応し、連合学習までする。だが配線図は、その仕組みを教えてくれなかった。30年かけても、だ。14万ニューロンのハエで急に話が変わると考える理由は、あまりない。

配線図に載らないもの

なぜか。静的な配線図は、機能を生む情報の多くをそもそも記録していないからだ。

極めつけは、ばらつきがノイズではないことだ。同じ個体でも、個体間でも、神経活動は揺れる。だがこの揺れは雑音ではなく、適応と「個性」の本体——消してはいけない信号だ。

地下鉄の路線図

うまい比喩がある。コネクトームは地下鉄の路線図だ。どの駅とどの駅がつながっているかは完璧に分かる。だが、路線図は教えてくれない——いつ電車が走るのか、誰が乗るのか、その路線が街にとって何のためにあるのかを。

だから神経科学では「コネクトームは必要だが十分ではない」が定説になっている。実際、構造と機能の結合は、思ったよりゆるいことが分かっている。配線という地図の解像度をどれだけ上げても、領土——動き、時間、修飾、状態依存性が織りなすダイナミクス——は、地図とは別物なのだ。

それでも、無駄ではない

誤解しないでほしい。配線図は土台として本物の価値がある。実際、ある魚(ゼブラフィッシュ)では、配線図から作った神経回路モデルが、眼球運動中の神経活動を集団レベルで統計的に言い当てた。脊椎動物で配線から機能を予測できた初の例だ。FlyWireも、神経伝達物質の種類や細胞型といった別の層のデータを重ねることで、性差の回路マップなど新しい研究を次々生んでいる。

コネクトームは「答え」ではなく「最初の一歩」だ。問題は、それを答えと取り違えることにある。

結論:測り尽くしても、足りないとき

このサイトで何度も戻ってくる主題に、また行き着く。ボトルネックは、たいてい一番目立つデータではない。

コネクトームは「すべてを測り尽くす」という夢の純粋な達成形だ。それでも理解に届かないのは、足りないのがデータのではなく種類だから——静的な地図には、機能が宿るダイナミクスが載らない。もっと配線を、もっと解像度を、という方向だけでは越えられない壁がある。

データを増やすことが答えになるのは、それが正しい種類のデータであるときだけだ。脳はいま、人類が「全部測ったのに分からない」を最も鮮明に突きつけてくる対象になっている。


参考: FlyWire 全脳コネクトーム (Nature, 2024-10; 139,255ニューロン/5,000万シナプス); C. elegans の構造-機能ギャップ (2025); 「necessary but not sufficient」; ゼブラフィッシュ配線図からの活動予測 ほか。

この記事はAIが下書きし、人間が編集・公開しています。