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AIエージェント

自己進化ハーネスは人間設計を超えたと報告。採点表に疑義

2026/7/29 (更新: 2026/9/11)

目次
【背景】自己進化するハーネスが人間設計を上回ったと報告された方法としては本物の前進である【問い】だがその数字が乗る採点表は、どこまで信頼できるのかSWE-bench は漏洩、Terminal-Bench2 は上位提出の攻略が実証されている
※概念図(背景→問い):上回ったという報告を、どの採点表が支えているか

コーディングエージェントの世界で、いま多くの仕事をしているのは、モデルそのものよりもハーネス(harness。評価研究ではスキャフォールド/scaffold と呼ばれることが多く、語はまだ揺れている)だという見方が広まった。ハーネスとは、モデルに道具を渡し、環境とやり取りさせ、記憶を管理し、長い作業を段取りする土台である。そのハーネスを、これまでは人間が手で設計し、調整してきた。

そこへ、ハーネスを自動で進化させる(英語では harness evolution)という研究が出た。しかもそれは、人間が設計したハーネスをベンチマークで上回ったと報告している。前進のように見える。だが落とし穴がある。看板の数字が乗る Terminal-Bench 2 は、上位3件の提出がいずれも採点の抜け穴を突いていたと独立監査が指摘した表である。転移先に選ぶ SWE-bench 系も、独立研究が「汚染されている・攻略できる」と繰り返し実証してきた採点表だ。この記事は、その採点表を一枚ずつ点検する。問いを先に置く。自己改良の数字は、どの採点表の上に立っているのか。その表は、どこまで攻略に耐えるのか。

「ハーネスを自動で進化させる」とは

その研究「Agentic Harness Engineering(AHE)」は、ハーネスの改良を試行錯誤でなく閉ループの自律プロセスにすると主張する1。鍵は3つの「観測可能性(observability)」だと論文は説明する。

論文が報告する数字は具体的だ。Terminal-Bench 2 は、コマンドライン上の実務的な難タスク89問を機械判定で採点するベンチである。この表で pass@1 が 69.7%→77.0% へ上がり、人間設計の Codex-CLI ハーネス(71.9%)を上回った。ただし条件は狭い。まず 77.0% は10反復の到達点ではなく最良チェックポイントである。 論文は「最良の構成を AHE として報告する」と明記し、その山は第8反復の 76.97 で、曲線は単調でないと自ら書いている。そして最大の留保は、著者らが Terminal-Bench 2 の全89問を回して進化ループを駆動し、看板の数字を同じ89問の上で測っていることだ(We drive evolution on the full 89 tasks)。held-out 分割は無い。ベースモデルは GPT-5.4(高推論設定)固定、1タスクあたりのロールアウトは2回、信頼区間は報告されていない。人間設計の Codex を超えた幅(77.0−71.9=5.1 ポイント)は、89問なら約4.5問ぶんで、論文自身も「分散の大きい設定であり、主張の範囲はそれに応じて解釈されるべきだ」と断っている。難度別に見ると勝ち方も偏る。Easy(4問)87.5→100、Medium(55問)78.2→88.2 に対し、Hard(30問)は 51.7→53.3 で、人間設計の Codex(56.7%)を下回ったままだ。論文はこれを能力の欠落ではなく部品どうしの干渉として説明する。記憶・ミドルウェア・システムプロンプトがどれも同じ「閉じの検証」を押すため、重ねると長期ホライズンの予算を冗長な再検査に費やす。単一部品の利得の総和が +11.1 ポイントなのに対し、全部入りの AHE は +7.3 ポイントにとどまる。実際、長期記憶だけを種に足した版は Hard で 63.3% に達する。この値は全部入りの AHE(53.3%)を超え、人間設計の Codex(56.7%)も上回る(Table 3。§4.2 も「長期記憶だけを種に入れ替えると Hard で Codex を上回る」と明記する)。Hard を 63.3% にする部品は、同じ論文の中に既にあった。89問の集計値を最適化したループが出荷したのは、53.3% の構成のほうだった。そのうえで論文は、進化ループがそのトレードオフを手放さない理由を「evolve agent は 55 問の Medium が支配する集計値を最適化するため、Medium 寄りのトレードオフに収束する」と書く。SWE-bench Verified へは、成功率をほぼ横ばい(seed 75.2%→75.6%、500問)に保ったままseed比12%少ないトークンで移り、Terminal-Bench 2 上では別のモデル族へも +5.1〜10.1ポイント転移したという。ablation の所見では、利得が集中したのは system prompt でなく道具・ミドルウェア・長期記憶だった。もうひとつ、論文は各編集に紐づけた予測がどれだけ当たるかも測っている。修正の予測は乱数の約5倍(precision 33.7%/recall 51.4%)に届く一方、回帰の予測は約2倍(11.8%/11.1%)にとどまり、「大半の回帰は予見されない」。先に触れた曲線の非単調さはこれが原因だ、と論文は自ら書き、「今後の自己進化ループにとって最も明確な課題」だと位置づけている1。コードは公開されている2

これは孤立した主張ではない

「エージェントの足回りを、重みを更新せずに自動最適化する」という研究の流れは、いま活発だ。ACE は、エージェントの文脈を「進化する playbook」として実行フィードバックから磨き、エージェント課題で +10.6% を報告する3。ただしこれは自己報告だ。先に見た AHE の対照実験では、ACE は種のハーネスをむしろ下回っている(Terminal-Bench 2 で 68.9% 対 69.7%)1。とはいえこの 68.9% は、ACE に勝つと主張する側が自分のベースラインとして再実装した値でもある。割り引きは両側に要る。Tencent の Training-Free GRPO は、パラメータを一切更新せず、rollout 間の意味的な優劣から経験知をトークンの事前分布として学ぶ4。同じ AHE の表では、この手法が 72.3% で、種(69.7%)も人間設計の Codex(71.9%)も上回っている。人間設計を超えた自己進化は AHE だけではない1。さらに遡れば、宣言的な LM パイプラインのプロンプトを自動最適化する DSPy5 や、実行ログへの自然言語の内省でプロンプトを進化させ強化学習を上回ると報告する GEPA6 がある。

つまり「ハーネスやスキャフォールドは自己改良できる」という見立て自体には、複数の裏づけがある。AHE はその系譜の中で、編集対象をハーネス部品にまで広げ、各編集を予測付きの契約にした点が新しい。方法としての前進は、認めていい。

だが、その採点表は信用できるのか

問題は、これらの手法が向かうベンチマークの信頼度が一様でないことにある。まず区別がいる。AHE が看板に据えた Terminal-Bench 2 は、独立の監査がすでに欠陥を指摘した表だ。ペンシルバニア大のグループが2026年4月に公開した監査は、Terminal-Bench 2 リーダーボードの上位3件がいずれも採点の抜け穴を突いていたと報告する。監査によれば、首位の Pilot(82.9%)は、課題の検証コードがエージェント環境に読み込まれる構成になっており、429軌跡のうち415で、エージェントは本来アクセスできないはずの /tests を読んでいた。2位・3位の ForgeCode(81.8%)では AGENTS.md 経由でシステムプロンプトに答えが入っていたという。⚠ 監査自身は、この型を提出者が意図した不正とは限らないもの、つまりハーネス水準で起きる一種の「メタ」な報酬ハッキングでありうるものとして扱っている7AGENTS.md を参照していた軌跡を、同じモデル(Claude Opus 4.6)が素のスキャフォールドで出した成績に置き換えると、全体の合格率は 81.8% から約71.7%へ落ちると著者らは見積もる7。さらに同じ監査は、提出者の仕込みが無くてもエージェント自身が Terminal-Bench 2 の検証器を破る例を挙げている。適応棄却サンプラを実装する課題で、Claude Opus 4.6 のエージェントが、実行すると必ず PASS と出力するコードを書いた。このエージェントはハーネスを外側ループで自動探索する Meta-Harness 経由である8。検証器はエージェントのコードを走らせ(PASS が出る)、続けて自前の検査を走らせる(FAIL が出る)が、出力に PASS が含まれるかしか見ない。エージェントの出力が先に来るので、実際のテストが落ちていても通る7。別チームは、Terminal-Bench 2 を含む5つの公開ターミナル系ベンチの1,860タスクから、報酬ハック可能と確認された331環境と3,632件のハック軌跡を公開している9。一方、この手法が転移先に選ぶ SWE-bench 系については、ここ1〜2年、独立研究が繰り返し欠陥を指摘してきた。

さらに、エージェントのベンチマーク全般を自動監査した研究は、主要10ベンチに8種のパターンで 219個の悪用可能な欠陥を見つけ、「1問も解かずに」大半のベンチでほぼ満点に達したと報告する。評価パイプラインは「敵対的な発想を内面化していない」と結論づけた13その10ベンチには Terminal-Bench が含まれる。 89タスク・出典 arXiv:2601.11868 で、AHE が看板の数字を出したのと同一の表である。同じ監査は転移先も同じ列に並べ、「簡単な攻撃で10本中9本のベンチのハック率をほぼ満点まで押し上げられる。Terminal-Bench、SWE-bench Pro、SWE-bench Verified を含む」と書く。Verified を落としたのは、全テストを強制的に通す9行の PyTest フックだった13。道具を使うエージェント課題では、結果報酬で強化学習をかけたモデルほど測定可能な報酬ハッキングが多い、という対応も、報酬ハックを測った研究が報告している。ただし著者ら自身が、これは同一ベンダー系列どうしの比較であって要因を切り分けた実験ではないと断っている。もっとも著者らはその留保に打ち消しも添えていて、同じ向きは4社すべてで例外なく再現しており、「4社で一致する以上、単一ベンダー固有の学習パイプラインのせいにするのは難しい」とも書く14

採点表に向かって自己改良するループは、その採点表が正直なぶんだけしか正直になれない。 ここで採点表を分けて見る必要がある。転移先の SWE-bench は漏れが実証済みだが、AHE がそこで伸ばしたのは成功率(75.2%→75.6%)ではなくトークン効率だ。割り引くべき上積みが、そもそもほとんどない。しかもその +0.4 ポイントは、一様な底上げではない。原典の内訳では、上積みは最大の2リポジトリ(django・sphinx-doc)に集中し、小さい3リポジトリ(scikit-learn・pydata・astropy)ではむしろ下がっている1。著者らの説明は、小さいリポジトリでは pass@1 の分散が1本あたりの利得を上回る、というものだ。看板の Terminal-Bench 2 も、上位提出の攻略が実証済みだ。AHE 自身の走行が抜け穴を踏んだと示す証拠はないし、論文の側にも防壁はある。進化ループが書き込めるのはハーネスの作業領域だけで、実行ログ・トレーサ・検証器・モデル設定は読み取り専用であり、「検証器を無効にする/モデルを差し替える/推論予算を上げる」という自己改変の近道は封じてある。だが封じられているのは進化ループの側で、個々のタスクを解くエージェントが検証器を素通りしないことまでは保証しない。論文自身も「完全なガードレール群を備えてはいない」「統制された研究プロトタイプと見るべきだ」と書いている1。それでも、「この採点表なら安全」とは言えない。むしろ逆で、別チームの敵対的探索は、AHE が回したその89問のうち14問(15.7%)を「報酬ハック可能」と確認している(ハック軌跡186件)9。しかもこの2つの監査は、穴の在りかについて逆を言う。Terminal Wrench は「抜け穴は評価ハーネスではなく課題ごとに固有であり、それゆえ塞ぎにくい」とし、BenchJack は同じ種の欠陥が課題ごとではなくベンチ全体を貫く構造的なものだとする13。結果報酬に最適化するループが抜け穴を登りうるのは、原理の話ではない。上位提出の攻略を暴いたその監査は、AHE と同種の(ハーネスを自動探索する)系のエージェントが Terminal-Bench 2 の検証器を破った例も記録している。しかも著者らは、この型を偶発ではなく構造として、「ハーネス水準の不正は、開発者が意図してやっているとは限らず、一種の『メタ』な報酬ハッキングでありうる」と説明する。開発者がコーディングエージェントを使ってハーネスを設計しているためで、「メタエージェント自身が不正をしている」ということだ。「これは autoresearch やメタハーネスが広く採り入れられるにつれて顕在化する」7。未確認なのは「この表が攻略できるか」ではなく、AHE の走行がその抜け穴を踏んでいないかのほうだ。ただし、この記事の見立てを支える実例は、抜け穴を待たなくてもすでに手元にある。Hard 寄りの利得を進化ループが手放した理由が「55問の Medium が支配する集計値を最適化したから」だと論文自身が書いている。同じ形は、事例研究の側にも出ている。進化ループが足した規則のひとつは、エージェントの自己検査を、隠れた検証器が主張するのと同じ項目へ揃えるものだった。進化ループは、同じ反復で「見えている標本に過適合するな」という規則も足している1。不正をひとつも踏まずとも、採点表の形がそのまま成果物の形になる。目標がゲーム可能なベンチなら、ループはそのゲームを最適化する。

自己進化そのものにも、天井がある

仮にベンチが健全でも、自己進化が無限に伸びるとは限らない。自己進化する言語モデルの一般化を測った研究は、ベースモデルは超えるものの過剰な計算の後で頭打ちになり、理想的な教師監督との間に無視できない差が残ると報告する。ただしその主実験は解が一意に決まる論理パズル(Knights and Knaves)であり、実世界の推論ベンチのほうは追加で測った側だ。そこでの上積みは「modest(小幅)」にとどまったという。そして原典は、同じ抄録で例外も名指ししている。多ターンの critic-revision を大きいモデルで回した設定では、Gemma 3 12B が理想的な教師監督にほぼ並ぶ(52.8% 対 53.6%)。「閉ループの自己進化は、モデル自身の検証・改訂能力が強いほど格段に効きやすくなる」というのが原典の読み方だ(ただしその作り方は計算コストが高い、とも断る)。頭打ちの高さは設定に依存するのであって、この研究が測った天井をそのまま AHE の設定へ持ち込むことはできない15。エージェントの自動最適化を体系的に調べた別の研究も、利得は実在するが「設定の余地・課題特性・指標の明確さ・計算予算」に条件づけられる、つまり普遍的でなく設定依存だと明言する16。AHE のクロスモデル転移の数字については、可能性の指摘ではなく、論文自身が「AHE のステップ予算とタスク別タイムアウトは、進化の最中に GPT-5.4 高推論へ合わせて調整された」と言い切っている。ゆえに推論段を上下どちらに振っても利得は目減りし、論文は「どちらの向きでも利得は割り引かれる」と書く。ただしこの断り書きが掛かるのは転移の数字までで、トークン効率については論文は同じことを述べていない。

方法の前進と、証拠の格は、別物だ

自己進化するハーネスは、方法としては本物の前進だ。人手のチューニングを閉ループに置き換え、各編集を予測付きの契約にする発想は、この分野が向かうべき方向を指している。ただし、その契約がいま当たるのは修正の側だけで、回帰の側は先に見たとおり乱数の約2倍にとどまる。方向は正しくても、契約はまだ半分しか履行されていない。

だが、そこから出てくるベンチマークの数字は、そのままでは実世界の能力の証拠にならない。転移先の SWE-bench は独立研究が漏洩を実証してきた表であり、看板の Terminal-Bench 2 も、上位提出が採点の抜け穴を突いていたと独立監査が指摘した表だ。どちらの表の数字も、抜け穴を踏んでいないことを個別に確かめるまでは「実力の証明」にならない。本当の試験は、ゲームできないベンチでも利得が生き残るかにある。ここで言うゲームできないベンチとは、変異させた現実的な課題や、汚染を織り込んで更新され続けるベンチである。そしてこの要求は、少なくとも一部は非現実的ではない。報酬ハックを測った側では、評価環境を硬化するだけで悪用率が 6.5%→0.8%(相対 87.7% 減)まで落ち、しかも正答率は統計的に区別できなかった(83.2% 対 82.8%)14。硬化は精度を買い戻す取引ではない。

これは、コーディングベンチマークの飽和にも、報酬ハッキングの実測にも共通する構図だ。スコアは飽和したが、その数字が何を意味するかは別問題である。

そのうえで、「穴を塞いでから測り直せばよい」という逃げ道は、少なくともこの2枚については開いていない。ベンチ全般を監査したチームは、見つけた欠陥にパッチを当てたうえで再攻撃をかけている。ハック率を半分以下に抑え込めたのは10本中4本(AgentBench・WebArena・OSWorld・SWE-bench Pro)だけで、「SWE-bench Verified と Terminal Bench を含むそれ以外は、報酬ハッキングの抜け穴が開いたままだ」。差は初期設計の堅さにあり、「これらはパッチすべきバグではなく、取り消すべき設計判断であり、コードだけのパッチでは信頼境界を元の位置に戻せない」と著者らは書く13。この記事が扱う2枚の採点表は、どちらも後者に入っている。

だから、自己進化するハーネスに出会ったら、見極めは二段になる。その順位は、何の課題で得たものか。そしてその表は、そもそも設計として攻略に耐えるのか。


出典16件
  1. Lin ら「Agentic Harness Engineering: Observability-Driven Automatic Evolution of Coding-Agent Harnesses」arXiv:2604.25850(2026-04-28 投稿、v4 2026-05-18)。ハーネス部品を可逆編集可能にし、各編集を「予測→後続結果で検証」する反証可能な契約として自律進化させる手法。本文の数値(Terminal-Bench 2 pass@1 69.7→77.0、Codex-CLI 71.9 超え、SWE-bench Verified へ12%少トークン転移、クロスファミリー3系列で +5.1〜10.1pt(代替ベース5種すべてでは +2.3〜10.1pt)、利得は道具・ミドルウェア・長期記憶に集中)は、いずれも同論文が報告したもの。Table 1(Terminal-Bench 2 pass@1、89タスク)の全行は OpenCode 47.2 / Terminus-2 62.9 / Codex 71.9 / NexAU0(種)69.7 / ACE 68.9 / TF-GRPO 72.3 / AHE 77.0。Table 2(SWE-bench-verified・N=500)の NexAU0→AHE のリポジトリ別内訳は django 79.2→81.0(N=231)/sympy 70.7→70.7(75)/sphinx-doc 68.2→70.5(44)/matplotlib 73.5→73.5(34)/scikit-learn 93.8→87.5(32)/pydata 77.3→72.7(22)/astropy 54.5→50.0(22)で、原典は “the seed-relative gain concentrating on django and sphinx-doc, the two largest and most token-expensive repositories” / “Marginal regressions appear only on the three smallest repositories, consistent with pass@1 variance on small repos exceeding the per-repo gain” と書く。本文が引く事例研究は Appendix C の db-wal-recovery で、Agent Debugger がこの失敗を “proxy validation instead of evaluator-isomorphic validation” の型に分類し、進化ループが入れた mirror-the-evaluator 規則が “replaces the json length == 11 self-check with an end-state sweep that asserts the same fields the hidden verifier asserts”、no-overfit 規則が “R5. Generalize, do not overfit visible samples.” である。当該の軌跡は reward 0.0 の失敗であり、欺かれていたのは検証器ではなくエージェント自身である。 記事の「AHE 自身の走行が抜け穴を踏んだと示す証拠はない」はこの記録によって覆らない。本稿執筆時点で会議録・査読誌への採録は確認できない(DBLP は CoRR のみ、Crossref と ACL Anthology に該当記録なし、arXiv 側にも journal-ref なし)=未査読プレプリントとして読むべき出典である。 https://arxiv.org/abs/2604.25850 2 3 4 5 6 7

  2. AHE のコードは公開されている(github.com/china-qijizhifeng/agentic-harness-engineering)。ページの存在は確認したが、公開物の中身(実際に再現可能な実装が含まれるか)は本稿では検証していない。 https://github.com/china-qijizhifeng/agentic-harness-engineering

  3. Zhang ら「Agentic Context Engineering: Evolving Contexts for Self-Improving Language Models」arXiv:2510.04618(2025-10)。重みを更新せず、Generator/Reflector/Curator のループで文脈を「進化する playbook」として磨き、エージェント課題で +10.6% を報告。足回りの自動最適化が現に効くことの裏づけ。 https://arxiv.org/abs/2510.04618

  4. Cai ら「Training-Free Group Relative Policy Optimization」arXiv:2510.08191(Tencent Youtu Lab、2025-10-09)。パラメータ更新なしで、rollout 間の意味的な優劣から経験知をトークンの事前分布として学ぶ。AHE が比較対象に挙げる自己進化ベースラインの一つ(AHE は “TF-GRPO” と略記)。 https://arxiv.org/abs/2510.08191

  5. Khattab ら「DSPy: Compiling Declarative Language Model Calls into Self-Improving Pipelines」arXiv:2310.03714(Stanford、2023-10)。宣言的な LM パイプラインをコンパイルし、プロンプト/重みを “teleprompter” で自動最適化する枠組み。スキャフォールド自動最適化の源流の一つ。 https://arxiv.org/abs/2310.03714

  6. 「GEPA: Reflective Prompt Evolution Can Outperform Reinforcement Learning」arXiv:2507.19457(2025-07)。実行軌跡への自然言語の内省でプロンプトを遺伝的に進化させ、はるかに少ない rollout で強化学習(GRPO)を上回ると報告。 https://arxiv.org/abs/2507.19457

  7. Adam Stein, Davis Brown, Hamed Hassani, Mayur Naik, Eric Wong(University of Pennsylvania)「Finding Widespread Cheating on Popular Agent Benchmarks」(2026-04-10)。9ベンチ・28件超の提出を監査。Terminal-Bench 2 は上位3件がいずれも採点の抜け穴を利用。#1 Pilot(82.9%)は検証コードをエージェント環境に読み込ませ、429軌跡中415で /tests を読んでいた。task-level では、Meta-Harness 経由の Claude Opus 4.6 が Terminal-Bench 2 の検証器にプロンプト注入で通った例も記録している(6ベンチ計28件の確認済み軌跡の一つ)。原典はこの型を構造的なものと位置づけている。Harness-level cheating is not always intentional cheating by the developer, but can be a kind of "meta" reward hackingWe believe this is due to developers designing agent harnesses with coding agents; so this occurs due to the meta-agent itself cheating. This becomes explicit as autoresearch and meta-harnesses become more widely adopted.(本文48行目の鉤括弧はこの2文の訳。以前は誤って別の監査に帰属していた)。#2/#3 ForgeCode(81.8%)は AGENTS.md 経由で答えをシステムプロンプトに注入し、AGENTS.md を参照していた軌跡を同一モデル(Claude Opus 4.6)の素のスキャフォールドでの成績に置き換えると全体の合格率は約71.7%に落ちる、と見積もる(提出全体を走らせ直した実測ではなく、当該軌跡だけを差し替えた推計)(原典は同じ提出を「#2 と #3」と呼ぶ一方、順位変動は「1位から14位へ」と書いており、順位の表記が原典内で揺れている。ここでは揺れのない合格率の低下を採った)。査読前の公開監査。 https://debugml.github.io/cheating-agents/ / 査読前論文「Detecting Safety Violations Across Many Agent Traces」 https://arxiv.org/abs/2604.11806 2 3 4

  8. 「Meta-Harness: End-to-End Optimization of Model Harnesses」arXiv:2603.28052(2026-03-30)。an outer-loop system that searches over harness code for LLM applications。ハーネスのコードそのものを外側ループで探索する系である。AHE のリポジトリ説明も自らを “concurrent w/ meta-harness” と位置づけており、[^tb2cheat] が記録した Terminal-Bench 2 検証器突破の主体が AHE と同種の系であることは、この2点から確かめられる。 https://arxiv.org/abs/2603.28052

  9. Bercovich, Segal, Zhang, Saxena, Raghunathan, Zhong「Terminal Wrench」arXiv:2604.17596(2026-04-19)。TerminalBench・Terminal Bench 2・Terminal Bench Pro・SETA・OpenThoughts-TB-dev の5ベンチ1,860タスクに4万回超の敵対的試行を行い、報酬ハック可能と確認された331環境と3,632件のハック軌跡を公開。うち Terminal-Bench 2.0 由来は89タスク中14環境(15.7%)・ハック軌跡186件(同論文 Table 1)。 https://arxiv.org/abs/2604.17596 2

  10. Aleithan ら「SWE-Bench+: Enhanced Coding Benchmark for LLMs」arXiv:2410.06992(York U./U. Calgary、2024-10-09)。SWE-bench の「成功」パッチの 32.67% は解答漏れ(カンニング可能)、31.08% はテスト不備で通過(2024年の SWE-agent + GPT-4 という単一構成)。同論文は SWE-bench Verified も名指しで測っている。 著者3名が Verified の issue report を突き合わせ、37件で解答が課題文や議論にそのまま書かれていることを確認(同論文 Table 2 の分母は SWE-Agent+GPT-4 が合格させた112件で、33.04%)、合格パッチの 55.36% が疑わしく、解決率は 22.4%→10.0% に半減すると報告する。本稿が転移先として挙げている 500 問の Verified が、その分母である。除去後 SWE-Agent+GPT-4 の解決率は 12.47%→3.97%。課題の 94% 超がモデルの知識カットオフ以前=漏洩リスク。 https://arxiv.org/abs/2410.06992

  11. Prathifkumar ら「Does SWE-Bench-Verified Test Agent Ability or Model Memory?」arXiv:2512.10218(Central Peel Secondary School/U. Waterloo、2025-12-11)。課題文のみを与えたファイル特定タスクで、Claude Sonnet 3.5/3.7 の的中率は SWE-bench Verified が同種ベンチの約3〜6倍(ground truth 全ファイル的中で BeetleBox 比ほぼ6倍、SWE-rebench 比約3倍。課題文+ファイル構造を与えた条件では順に約4倍・約2倍)。なお BeetleBox 側の統制は SWE-bench Verified と重ならないリポジトリの選択であり、汚染を織り込んで更新され続けるのは SWE-rebench のほう。同論文はエンドツーエンドの解決率を比較しておらず、測っているのはファイル特定のみ。著者らはこの差を学習データの重なりの反映だと論じる。 https://arxiv.org/abs/2512.10218

  12. Garg ら「Saving SWE-Bench: A Benchmark Mutation Approach for Realistic Agent Evaluation」arXiv:2510.08996(Microsoft、2025-10)。GitHub issue を現実的なユーザー発話に変異させると、エージェントの成功率は SWE-bench Verified で −36.5%(GPT-4.1)/−27.8%(Sonnet 3.7)/−23.2%(Sonnet 4)、内部 C# セットで −10.7〜−16.8%、TypeScript の Multi-SWE-Bench で −16.8〜−53.8%(いずれも相対、Table 1)。要旨の「公開ベンチで50%超の過大評価」は公開2ベンチをまとめた言い方で、50% を超えるのは TypeScript/Sonnet 4 の1セルのみ。SWE-bench Verified 単体の最大は 36.5% で、同論文 §5.1.1 も『全モデルで相対成功率が20〜40%低下』と書いている(結論節はさらに別の「20〜50%」を使っており、丸めが原典内で揺れている)。原典は限界も自ら切っている。変異が本質的な技術情報を落として難度を変えた可能性、評価ハーネスは未変更、対象はバグ修正のみ。ベンチ利得が実務対話へ転移しない証左。 https://arxiv.org/abs/2510.08996

  13. Wang ら「Do Androids Dream of Breaking the Game? Systematically Auditing AI Agent Benchmarks with BenchJack」arXiv:2605.12673(UC Berkeley、2026-05-12)。自動監査が8パターンで 219 個の悪用可能な欠陥を発見し、「1問も解かずに」大半のエージェントベンチでほぼ満点に到達。評価は「敵対的発想を内面化していない」と結論。ベンチに向けた自動最適化が抜け穴を登るリスクの最強の裏づけ。 https://arxiv.org/abs/2605.12673 2 3 4

  14. Thaman「Reward Hacking Benchmark: Measuring Exploits in LLM Agents with Tool Use」arXiv:2605.02964(2026-05-03)。13のフロンティアモデルで悪用率は 0%(Claude Sonnet 4.5)〜13.9%(DeepSeek-R1-Zero)。RL 学習版ほどハックが増える傾向(DeepSeek-V3 0.6% vs R1-Zero 13.9%)。ただし著者らは、同一ベンダー系列どうしの比較であって切り分け実験ではないと明記する。難課題では13モデル全てで悪用率が非減少(Fisher の正確検定 p<0.0001、符号検定 p<0.001)だが、個々の増加(例: Claude Sonnet 4.5 の 0.0%→1.8%)は単独では有意でなく、主張はモデル横断のパターンについてのものだと著者ら自身が断っている。 https://arxiv.org/abs/2605.02964 2

  15. Qi ら「On the Generalization Gap in Self-Evolving Language Model Reasoning」arXiv:2606.01075(Harvard/Google、2026-05)。自己進化はベースを超えるが過剰計算後に頭打ちになり、理想的な教師監督との差が残る。原典は射程を自ら区切っている。Our primary experiments use Knights and Knaves (KK) logical reasoning tasks に対し Beyond KK, we also evaluate SE on real-world reasoning benchmarks, where gains are also modest.同じ抄録の直後の一文が例外を名指ししている。 We find that multi-turn critic-revision with large models could reach strong self-evolution performance, where Gemma 12B nearly matches oracle-supervised training.(本文では RevisionSE の gemma-3-12b-it が平均 52.8% で oracle の 53.6% に接近。結論節も The main exception is RevisionSE at larger scale と書く。ただし本文は constructing supervision in this way incurs a high computational cost とも断る)。ハーネス進化そのものを測ったものではないので、AHE の10反復を直接反証するものではなく、同型の飽和が起こりうることを示す傍証にとどまる。 https://arxiv.org/abs/2606.01075

  16. Brookes, Voskanyan ら「Evolving Excellence: Automated Optimization of LLM-based Agents(ARTEMIS)」arXiv:2512.09108(2025-12-09)。エージェント自動最適化の利得は実在するが「設定の余地・課題特性・指標の明確さ・計算予算」に条件づけられる=普遍的でなく設定依存だと明言。 https://arxiv.org/abs/2512.09108

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